MOX総合評価


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 日本で今、原子力論争の最もホットな争点となっているのが、原子力発電所(原発)でのMOX燃料利用の是非である。ここでMOXとは、混合酸化物(Mixed Oxide)の略称で、具体的には二酸化ウランと二酸化プルトニウムの混合物を指す。日本の原発では今まで、二酸化ウランのみを原料とした核燃料が使われてきた。だが電力会社、通産省、科学技術庁の三者は九七年春、一部の原発でMOX燃料を、炉心の3分の1に装荷して運転する構想を打ち出した。西暦2000年までに、関西電力と東京電力の2基ずつの原発にMOX燃料を装荷し、さらに2010年までに十六─十八基(日本の原発全体の三分の一弱)に装荷したいというのが、この構想の内容である。電力会社はすでに、福井、福島両県の知事に対して、受け入れ要請を行っている。

 このMOX利用計画(プルサーマル計画)の目的は、核兵器への転用が懸念されている余剰プルトニウムを発生させないことである。日本は現在約20トンのプルトニウムの在庫を抱えている。それは当初、主に高速増殖炉の燃料に使う予定であったが、高速増殖炉開発計画が事実上の凍結状態に陥り、また将来再開されたとしても、もんじゅまでで打ち切られる可能性が濃厚となったため、使い道がなくなったのである。だがMOX燃料利用は、核拡散のリスクを増大させ、安全面でのリスクを高め、経済的コストを大幅に増加させるなど、数々の問題点をはらんでいる。しかも日本は現在、核燃料再処理計画の推進という基本政策を堅持しているが、それを余剰プルトニウムを出さないというもうひとつの基本政策と両立させるには、MOX燃料利用をさらに大胆に拡大する以外に道はない。

 本書はMOX燃料利用の是非について、各国の原子力関係政府機関や原子力産業界と利害関係を持たない第三者的専門家のグループが、総合的な検討を加えた作品である。その結論は、すでに発生したプルトニウムに関しては、高レベル廃棄物と混ぜてガラス固化するのが妥当であり、また今後は再処理によるプルトニウム抽出を止め、使用済核燃料を金属製キャスクに封入し直接処分を行うのが妥当である、というものである。読みやすい本ではないが、原子力開発の推進勢力やその味方に立つ専門家の説明に納得のいかない読者に、一読を勧めたい。

(吉岡 斉・九州大学教授)
『信濃毎日新聞』1998年9月6日付より