書評 

クィア・スタディーズ96


  『クィア・スタディーズ96』

 暑い夏に読む本なら、できるだけゾットするのがいい。といっても、ホラーやミステリーを勧めようというのではない。日本初、性少数者たちによるジェンダー/セクシャリティー研究のクィア・スタディーズ編集委員会編『クィア・スタディーズ96』(七つ森書館、1996年)なら、一味違う納涼感が楽しめると思うのだ。これまで性的多数派は、少数派に対して、彼らはなぜ正常な性的指向を逸脱しているのか?という疑問を投げ掛けていた。自分たちをスタンダードとしている点では、反動的な立場の人々も、リベラルを理想とする人々も同じであった。しかし、日本では異性愛はひとつの性的様式としか認識されていない。もっといって、けっして豊かとは見えないライフスタイルとして対象化されているのだ。それだけ性的少数者たちは、自分たちのありように自信を持ち、社会の構造自体にに疑問を抱き始めているのである。そんな逆転した性の政治学を体験してみたいという蛮勇のある人には、ぜひとも手に取ってほしい一冊である。きっと自身の「性」が相対という恐怖の中にたたき込まれることであろう。

『世界』 1996年9月号
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