食べ物は商品じゃない
竹内直一 著




    

 日本消費者連盟の創設者で、元代表委員の故竹内直一さん(01年12月死去)の文章をまとめた「食べものは商品じゃない―すこやかな命を未来へ」が出版される。

自国民の食い扶持は自国内で/食料の消費構造を変えられるのは私たち…

 書名の「食べものは商品じゃない」は竹内さんの口ぐせから取った。農業や食の工業化に警鐘を鳴らし、食の未来を憂える講演や雑誌連載をまとめた。BSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂年病)問題や不正表示など、今につながる鋭い指摘が随所に見られる。
 農林省(当時)を辞める前の1968年ごろ、農林省が消費者保護を掲げてJAS(日本農林規格)法改正を打ち上げたとき、竹内さんは消費者側の立場で猛反対をした。
 「業者べったりの農林省が表示基準を作ろうとしている。これは結局、業界のいいなりの内容を押しつけることにほかならない。そう言ったら事務次官に『農林出身なのに反対するとは何事か。お前は反逆児だ』と言われた」
 不正表示でやり玉に挙がったJAS法の問題点が分かるこんなエピソードや、土地改良区への補助金配分で票集めをする農林族議員の存在、安全性を無視して食品を工業製品のように扱う農業政策への批判など、舌鋒鋭い文章が多く盛り込まれている。

 日消連の水原博子事務局長は「文章を改めて読むと、現在騒がれている問題をとっくに予想していたのかとさえ思える。『風土に合った食べ物でいのちをつなぐ』とか『自国民の食い扶持は自国内でまかなう』『食料の消費構造を変えられるのは私たち一人ひとり』といった竹内さんの理念を、もう一度よく考える時期なのでしょう」と話している。
 

『毎日新聞』 2002年3月16日 より


 日本消費者連盟を創設し、在野の消費者運動の土台を築いて昨年83歳の生涯を終えた著者の最後のメッセージ。戦中に農林省に入り68年に退官するまで食料、消費者行政を担当してきた著者は第二の人生ともいえる消費者運動において、食べものの根本と農業のあり方にこだわり続けてきた。本書はとりわけ、生命と環境を守る農業をいかに再生させるべきかという提言が明瞭に打ち出されている。


〈農民も消費者運動と同じように、運動として行動に立ち上がる必要があるのじゃないか〉という「新農本主義」の提唱や、消費者運動の側からの農協批判は傾聴に値する。その上で、〈生活者の意思で経済が変わる、需要は自然現象ではない〉と、消費者自身が経済の主権者になる道を、自らの経験をふまえて説く。書名の「食べものは商品じゃない」は著者の口ぐせで、昨今の農政の信頼を損なう問題を考える上でも、示唆に富む提起といえる。
 

『出版ニュース』2002年4月下旬号 より


 食をめぐる偽装が次々と暴かれる。悪事は必ず露見するのに、性懲りもなく消費者の目をごまかす。まじめな生産者にとって、腹立たしい限りだ。


 世の中おかしいと思う時は得てして政治、経済、社会の倫理が異常を呈していることが多い。それを仕方ないと受容する大衆心理に、悪が付け入り、はびこる。だが、大抵の場合“震源地”と、その周辺に通報者がいるので隠し切れない。それをホイッスル・ブロウアー(笛を吹く人)と呼ぶ。内部告発者の意である。1971年来日の消費者運動家ラルフ・ネーダーは「雇い主への忠誠より社会への忠誠を先行せよ」と訴えた。それが竹内直一氏を中心とした日本消費者連盟へと発展する。


 官僚生活から消費者運動へ身を投じた時は49歳。傍らで「つぶすな日本の農業」と叫び、生命と環境を守る農業の指命の大切さを説いた。「食べものは商品じゃない」が口癖だったと氏を知る久保田裕子国学院大学教授は懐かしむ。


 昨年末83歳で亡くなった竹内さんの活動が本になった。口癖そのままに「食べものは商品じゃない」(七つ森書館)。常に健やかな命と、その未来を願ったホイッスル・ブロウアーの生涯は食と農への愛情にあふれている。

『日本農業新聞』 2002年5月28日 より


 日本消費者連盟代表委員を務め昨年亡くなった竹内直一さんの生前の論説をまとめた。厳しい農政批判や食料の国内自給の重要性を説き、これからの生産者、消費者のあり方などを提言。食の安全が問われる今、示唆に富んだ内容だ。農水省の官僚から消費者運動に転じた自身の活動について語ったインタビューも。

『読売新聞』 2002年4月20日 より