原子力市民年鑑2003

原子力資料情報室 編
定価2800円+税
A5版 並製 352ページ
2003年刊
ISBN 4-8228-0367-8X


旧版旧年版掲載データ一覧(巻頭論文中のものを除く)

“もんじゅ判決”と現代の技術をめぐって──山口幸夫
原発トラブル隠しと2002年の原子力動向──西尾 漠
維持基準導入は原発安全余裕の切り詰め──伴 英幸
浜岡原発運転差し止め訴訟の意義と課題──海渡雄一
六ヶ所再処理工場燃料貯蔵プール 大規模な不正溶接発覚──澤井正子
六ヶ所再処理工場は誰の利益にもならない──西尾 漠
市民のエネルギーシナリオ2050──勝田忠広

第1部 データで見る日本の原発(サイト別)
日本の原子力発電所一覧
原発おことわりマップ
各年度末の原発基数と設備容量
原子力発電所の運転開始計画
主な原発裁判
原発に関する住民投票条例一覧
各原発の発電コスト試算値
総理府世論調査より
日本世論調査会の調査より
BWRの概念図
PWRの概念図
ABWRの概念図
研究炉・臨界実験装置一覧
各原発の立地概要

計画地点について
大間
浪江・小高

電力供給計画に見る運転 開始計画の延期状況
珠洲
芦浜
日置川
日高
久美浜
上関

豊北
窪川
串間

運転・建設中地点について

東通
女川
福島第一
福島第二
柏崎刈羽
東海・東海第二
浜岡
志賀
敦賀
美浜
大飯
高浜
島根
伊方
玄海
川内
ふげん・もんじゅ

第2部 データで見る原発をとりまく状況(テーマ別)
1.プルトニウム
1998年末現在のプルトニウム需給
プルトニウム需給計画
保管中の分離プルトニウム
原子炉級プルトニウム1gの毒性
各国の高速増殖炉
高速増殖炉の事故史
海外における軽水炉によるMOX燃料使用実績
日本における軽水炉によるMOX燃料利用試験
軽水炉用MOX燃料加工工場

2.核燃料サイクル
核燃料サイクル
日本のウラン濃縮施設
日本の核燃料加工施設
ウラン購入契約状況3
98年度日本のウラン輸入先
日本のウラン開発企業
各原子力発電所(軽水炉)の使用済み燃料貯蔵量および貯蔵容量
使用済み燃料中間貯蔵コストの試算例
使用済み燃料中間貯蔵の誘致の動きや噂のあったところ
各国の再処理施設一覧
再処理工場の事故史
東海再処理工場の運転実績
東海再処理工場の放射性廃棄物貯蔵量
六ヶ所再処理工場の廃棄物の推定年間発生量
六ヶ所核燃料サイクル施設の概要
六ヶ所核燃料サイクル施設の現状
六ヶ所核燃料サイクル施設関連年表

3.廃棄物
高レベルほど地下深くというだけの処分計画
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」の 基本的スキーム
高レベル放射性廃棄物の最終処分施設建設地の選定プロセス
高レベル放射性廃棄物ガラス固化体の発生量の見込み
高レベル放射性廃棄物処分の必要金額
高レベル放射性廃棄物の処分に関する各国の動向
各国の高レベル廃棄物処分計画
放射性廃棄物持ち込み拒否条例
低レベル固体廃棄物の累積保管量
使用済み燃料プール等に保管されている使用済み制御棒等の保管状況
解体廃棄物発生量の試算例
解体廃棄物処理処分費用の試算例
世界の停止発電炉の現状
人形峠周辺のウラン残土

4.事故
原子力発電所の事故の国際評価尺度
報告事象について
報告件数の推移
90年代以降の日本の主な原子力事故
内部告発で発覚した主な事故・不正
全原発平均設備利用率の推移
日本の加圧水型原発の蒸気発生器(SG)細管損傷状況
10万kWを超える原発の長寿番付
高燃焼度化の状況
定期検査における発電停止期間40日未満の実績
スリーマイル島原発2号炉メルトダウン事故
スリーマイル島原発事故のコンピュータ・シミュレーション
チェルノブイリ原発4号炉暴走事故
主な放射能の放出推定値
セシウム137汚染面積
汚染地域の住民数
チェルノブイリ原発事故による放射能汚染
ベラルーシの大人の甲状腺がん数変化
ベラルーシ,ウクライナ,ロシアの小児甲状腺が
日本で積み戻しとなった輸入食品
美浜原発2号炉蒸気発生器細管ギロチン破断事故
福島第二原発3号炉再循環ポンプ破損事故
もんじゅナトリウム漏洩火災事故
破損したナトリウム温度計の状況
東海再処理工場アスファルト固化施設火災・爆発事故
37人の被曝者が被曝した場所
JCO臨界事故
JCO臨界事故の被曝者
原子力災害対策特別措置法下の対応体制
屋内待避および避難等に関する指標
飲食物摂取制限に関する指標
オフサイトセンター一覧

5.地震
原発・核施設と地震観測地域
原子力安全委員会「耐震設計審査指針」の重要度分類
原発・核施設の設計用地震動
原子炉自動停止用地震加速度検出器設定値
半数の原発で指針制定前に許可
地震が引き起こした原発・核燃料サイクル施設の事故

6.被曝・放射能
商業用原発の被曝実績
放射線作業従事者の年間関係事業所数別人数及び 平均被曝放射線量
各原発における最高被曝線量
原発労働者の労災認定状況
放射性同位体のずさんな管理・廃棄による放射能災害例
放射線被曝の法定限度
放射能の単位
被曝線量と人体への影響
放射線の人体への影響

7.核
核爆発実験回数
核保有国の核弾頭の数
1998年インド・パキスタンの核実験
IAEA保障措置を受けている国の位置付け
IAEAによる査察の種類
2001年末におけるIAEA保障措置対象物質の概算量

8.世界の原発
世界の原子力開発の現状
主要国の原発発注状況
アメリカの原発発注とキャンセル
世界の原発ランキング
原発をめぐる国民投票
原発をめぐるアメリカの州民投票
世界の運転中原発一覧

9.アジアの原発
アジア各国の研究炉
アジア各国の原発
アジア各国の核燃料サイクル
アジアの主な原発事故
中国の主な原子力施設
台湾の主な原子力施設
韓国・北朝鮮の主な原子力施設
インド・パキスタンの主な原子力施設
アジア各国の状況と日本の関わり

10.原子力行政
原子力研究開発利用長期計画の新旧比較
主な原子力行政組織
原子力行政の分担
原発の立地の主な手続き
電源特会(電源開発促進対策特別会計)のしくみ
電源立地勘定の歳入・歳出額と残余額
原子力予算の推移
原子力損害賠償制度の概要
原子力基本法
原子力委員・原子力安全委員一覧
大学における原子力学科

11.原子力産業
日本の電力会社
発電主体の区分
電気事業「部分自由化」後の電力供給の形態
電気、ガス小売りの自由化対象拡大スケジュール
原子力産業と金の流れ
日本からの主な原発機器輸出受注実績
原子力産業の売上高と受注残高の推移
電気事業の原子力関係支出の内訳

12.輸送
原発用核燃料物質の輸送実績
核燃料物質等の運搬に関する規制体系
核燃料輸送物の分類例
プルトニウム輸送と護衛
主な放射性物質の輸送事故
主な核燃料物質の輸送事故
主要な核燃料物質移動量

13.エネルギー
日本のエネルギー供給の推移
長期エネルギー需給見通し
日本の発電設備
年度別電灯電力使用量
8月の電力需要
需要ピーク時の電力供給
2003年1月の各社最小電力と原発容量
電源別の発電量と余力
電力9社(北海道〜九州)最大・最小電力時の需給調整
日本のエネルギー・フロー
RPS(再生可能エネルギー導入基準)制度の仕組み
日本の太陽光・風力発電の導入実績
太陽光発電の導入実績と国の補助金の推移
世界各国の風力発電の設置増加状況
各国のエネルギー研究開発予算

14.核融合
核融合プラズマの閉じ込め方式と研究機関
3大トカマク型装置の概要
国際熱核融合実験炉(ITER)計画の概要
ITER建設に向けたスケジュール
ITER最終設計報告書案の概要
ITERの概念図
ITERの建設・運転スケジュール
ITERのコストと誘致国の負担
軽水炉と核融合炉の除染後の放射性廃棄物量の比較

15.原発立地市町村の地域経済
生産年齢人口(15〜64歳)の推移
原発立地と交付金タイムテーブル
人口および財政力指数の推移の例
核燃料税

16.その他
官公庁・電力会社等の所在地
原子力Webガイド
原子力関係略語表
元素記号表 346
放射性核種の壊変系列
単位諸元
年表
キーワードで検索する図表索引


・巻頭論文「“もんじゅ判決”と現代の技術をめぐって」
               山口幸夫/原子力資料情報室共同代表
・巻頭論文「浜岡原発運転差し止め訴訟の意義と課題」
               海渡雄一/浜岡原発運転差し止め訴訟弁護団

“もんじゅ判決”と現代の技術をめぐって

1「違法(瑕疵)の重大性をもって足り、明白性の要件は不要と解すべき」
 名古屋高等裁判所金沢支部は2003年1月27日、画期的な判決をくだした。
 高速増殖原型炉「もんじゅ」は、1980年12月に動燃(現:核燃料サイクル開発機構)から設置許可申請が出され、83年5月、国はこれを許可。地元住民40人が設置許可処分の無効確認の行政訴訟を国を相手に起こしたのが、85年9月。その後、原告適格をめぐる争いが一、二審で続き、92年、住民側が最高裁で勝訴。実質的な裁判は92年12月からだった。2000年3月、福井地裁で敗訴するも、ただちに控訴。02年4月結審、
03年1月の逆転勝訴となった。提訴から17年4ヶ月の歳月がながれた。
 朝日新聞社は速報号外を出して、「原子炉施設の建設・運転差し止めや設置許可などをめぐる訴訟で住民側の請求が認められたのは初めて。国の原子力政策に大きな影響を与えそうだ」と書いた。
 このたびの高裁判決の特筆すべき点を次の表現にうかがうことができる。
「原子炉容器内には人体に極めて有害な放射性物質が大量に内蔵されているのであって、原子炉は、正常に維持、管理されていても、常に潜在的危険性を有する構造物である。原子炉がかかる潜在的危険性を有する施設であることからすると、その設置許可の段階における安全審査に重大な瑕疵があるとすれば、当該原子炉は、付近住民にとって重大な脅威とならざるを得ない。この場合において脅威にさらされるのは、人間の命、身体、健康、そして環境であり、換言すれば、人間の生存そのものということができる。かかる何事にも代え難い権利、利益の侵害の危険性を前にすれば、原子炉設置許可処分の法的安定性並びに同処分に対する当事者及び第三者の信頼保護の要請などは、同処分の判断の基礎となる安全審査に重大な瑕疵ある限り、比較の対象にもならない、取るに足りないものというべきである。
 以上のことからすれば、原子炉設置許可処分については、原子炉の潜在的危険性の重大さの故に特段の事情があるものとして、その無効条件は、違法(瑕疵)の重大性をもって足り、明白性の要件は不要と解するのが相当である」。

巻頭論文「“もんじゅ判決”と現代の技術をめぐって」
山口幸夫/原子力資料情報室共同代表

浜岡原発運転差し止め訴訟の意義と課題

1 提起時の訴訟の争点
1. 東海地震と老朽化が二本柱
 本件訴訟は、2002年4月に、静岡県と全国の住民によって、近づく東海地震の恐怖と浜岡原発1号炉の二つの事故を契機に提起された。当初から、我々は老朽化と地震の二本建ての争点で訴訟を組み立ててきた。
 老朽化した原発を耐震設計で想定された規模以上の地震動がおそった場合の影響は安全審査で検討されていないということが我々の主張の柱であり、この争点の立て方はその後に判明した事実からしても極めて適切であった。

2. 想定をはるかに超える地震発生の危険性
 まず第一にこの原子炉の直下を含む震源で現在を含む近い将来にマグニチュード8を超える東海地震が発生することは確実である。このことは、国の地震予知連絡会が公式に言明し、政府・自治体が想定東海地震という大地震の発生を前提とした対策を既に始めているという公的な裏付けのある事実である。
 経済産業省と中部電力はこのような地震の発生時にも耐震設計による安全性は確認されていると述べている。しかし、この想定は震源中央からの距離に応じた単純な地震動の解析しかなされておらず、最新の地震学の発展に基づいたアスペリティの解析に基づく強震動分析はなされていない(詳細は後述)。また、この耐震設計は新品のどこにも応力腐食割れによるひび割れなどのない状態の原子炉を想定してしか実施されていないのである。

巻頭論文「浜岡原発運転差し止め訴訟の意義と課題」
海渡雄一/浜岡原発運転差し止め訴訟弁護団