原子力市民年鑑2004

原子力資料情報室 編
4500円+税
A5版 並製 344ページ
2004年刊
ISBN 4-8228-0483-6


旧版旧年版掲載データ一覧(巻頭論文中のものを除く)

「もんじゅ」判決から珠洲・巻原発計画断念まで──2003年原子力事情──西尾 漠
東京電力のずさんな原発管理実態──管理区域廃棄物の処分問題──武本和幸
不透明な原発のバックエンドコスト──勝田忠広
原発労働で多発性骨髄腫を発症した長尾光明さんに労災認定──切り捨てられてきた原発労働者の救済を!──渡辺美紀子
核燃料サイクルを問う公開討論「再処理と核燃料サイクル政策を考える」での提起──西尾 漠

第1部 データで見る日本の原発(サイト別)
日本の原子力発電所一覧
原発おことわりマップ
各年度末の原発基数と設備 容量
原子力発電所の運転開始計画
主な原発裁判
原発に関する住民投票条例 一覧
各原発の発電コスト試算値
総理府世論調査より
日本世論調査会の調査より
研究炉・臨界実験装置一覧
各原発の立地概要

計画地点について
大間
浪江・小高

電力供給計画に見る運転 開始計画の延期状況
珠洲
芦浜
日置川
日高
久美浜
上関

豊北
窪川
串間

運転・建設中地点について

東通
女川
福島第一
福島第二
柏崎刈羽
東海・東海第二
浜岡
志賀
敦賀
美浜
大飯
高浜
島根
伊方
玄海
川内
ふげん・もんじゅ

第2部 データで見る原発をとりまく状況(テーマ別)
1.プルトニウム
1998年末現在のプルトニウム需給
保管中の分離プルトニウム
原子炉級プルトニウム1gの毒性
各国の高速増殖炉
高速増殖炉の事故史
MOX燃料の漏洩事例
MOX燃料の使用済み燃料の特性
日本における軽水炉によるMOX燃料利用試験
軽水炉用MOX燃料加工工場

2.核燃料サイクル
核燃料サイクル
日本のウラン濃縮施設
日本の核燃料加工施設
ウラン購入契約状況
ウラン輸入先の内訳
日本のウラン開発企業
回収ウランの利用実績
各原子力発電所(軽水炉)の使用済み燃料貯蔵量および貯蔵容量
使用済み燃料中間貯蔵コストの試算例
使用済み燃料中間貯蔵の誘致の動きや噂のあったところ
各国の再処理施設一覧
再処理工場の事故史
東海再処理工場の運転実績
東海再処理工場の放射性廃棄物貯蔵量
六ヶ所再処理工場の廃棄物の推定年間発生量
六ヶ所核燃料サイクル施設の概要
六ヶ所核燃料サイクル施設の現状
六ヶ所核燃料サイクル施設関連年表

3.廃棄物
高レベルほど地下深くというだけの処分計画
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」の基本的スキーム
高レベル放射性廃棄物の最終処分施設建設地の選定プロセス
高レベル放射性廃棄物ガラス固化体の発生量の見込み
高レベル放射性廃棄物処分の必要金額
高レベル放射性廃棄物の処分に関する各国の動向
各国の高レベル廃棄物処分計画
放射性廃棄物持ち込み拒否条例
低レベル固体廃棄物の累積保管量
使用済み燃料プール等に保管されている使用済み制御棒等の保管状況
解体廃棄物発生量の試算例
解体廃棄物処理処分費用の試算例
世界の停止発電炉の現状
人形峠周辺のウランをめぐる訴訟

4.事故
原子力発電所の事故の国際評価尺度
報告事象について
報告件数の推移(法律対象)
90年代以降の日本の主な原子力事故
内部告発で発覚した主な事故・不正
全原発平均設備利用率の推移
運転開始後25〜40年の世界の原発(15万kW以上)の現状
高燃焼度化の状況
原子力安全基盤機構と定期検査
原子炉圧力容器の中性子照射脆化の監視のためのデータ
スリーマイル島原発2号炉メルトダウン事故
スリーマイル島原発事故のコンピュータ・シミュレーション
チェルノブイリ原発4号炉暴走事故
主な放射能の放出推定値
セシウム137汚染面積
汚染地域の住民数
チェルノブイリ原発事故による放射能汚染
ベラルーシの大人の甲状腺がん数変化
ベラルーシ,ウクライナ,ロシアの小児甲状腺がん
日本で積み戻しとなった輸入食品
美浜原発2号炉蒸気発生器細管ギロチン破断事故
福島第二原発3号炉再循環ポンプ破損事故
もんじゅナトリウム漏洩火災事故
破損したナトリウム温度計の状況
東海再処理工場アスファルト固化施設火災・爆発事故
37人の被曝者が被曝した場所
JCO臨界事故
JCO臨界事故の被曝者
原子力災害対策特別措置法下の対応体制
屋内待避および避難等に関する指標
飲食物摂取制限に関する指標
オフサイトセンター一覧
各国の安定ヨウ素剤服用に係るレベル等について

5.地震
原発・核施設と地震観測地域
原子力安全委員会「耐震設計審査指針」の重要度分類
原発・核施設の設計用地震動
原子炉自動停止用地震加速度検出器設定値
半数の原発で指針制定前に許可
地震が引き起こした原発・核燃料サイクル施設の事故

6.被曝・放射能
商業用原発の被曝実績
放射線作業従事者の年間関係事業所数別人数及び 平均被曝放射線量
各原発における最高被曝線量
原発労働者の労災認定状況
放射性同位体のずさんな管理・廃棄による放射能災害例
放射線被曝の法定限度
放射能の単位
被曝線量と人体への影響
放射線の人体への影響

7.核
核爆発実験回数
核保有国の核弾頭の数
核物質に関する不正売買等の内訳
放射性物質に係わる不正売買等の内訳
IAEA保障措置を受けている国の位置付け
IAEAによる査察の種類
2001年末におけるIAEA保障措置対象物質の概算量

8.世界の原発
地域別 世界の原子力開発の現状
主要国の原発発注状況
アメリカの原発発注とキャンセル
世界の原発ランキング
原発をめぐる国民投票
原発をめぐるアメリカの州民投票
世界の運転中原発一覧

9.アジアの原発
アジア各国の研究炉
アジア各国の原発
アジア各国の核燃料サイクル
アジアの主な原発事故
中国の主な原子力施設
台湾の主な原子力施設
韓国・北朝鮮の主な原子力施設
インド・パキスタンの主な原子力施設
アジア各国の状況と日本の関わり

10.原子力行政
原子力基本法
原子力委員・原子力安全委員一覧
主な原子力行政組織
原子力行政の分担
原発の立地の主な手続き
原子力予算の推移
電源特会(電源開発促進対策特別会計)のしくみ
核燃料税
原子力損害賠償制度の概要
原子力損害賠償法に基づく補償契約締結実績

11.原子力産業
日本の電力会社
発電主体の区分
特定規模電気事業者の現況
電気事業「部分自由化」後の電力供給の形態
電気、ガス小売りの自由化対象拡大スケジュール
原子力産業と金の流れ
日本からの主な原発機器輸出受注実績
原子力産業の売上高と受注残高の推移
電気事業の原子力関係支出の内訳

12.発電コスト
資源エネルギー庁/電気事業連合会による電源別発電コスト試算値の推移
1999年試算と2003年試算 @発電コスト
条件の一部を変えた場合の発電コストの試算結果
1999年試算の内訳
1999年試算と2003年試算 A核燃料サイクルコスト
原子燃料サイクルバックエンドの総事業費
原子燃料サイクルバックエンド事業の想定スケジュール
「再処理コスト11兆円」の内訳
使用済核燃料再処理引当金積立残高の推移
原子力発電施設解体引当金残高推移
最終処分積立金残高の推移
商業用原発の廃炉費用試算値・解体引当金算定の際の見積額
日本原燃(株)と電力会社との関係

13.輸送
原発用核燃料物質の輸送実績
核燃料物質等の運搬に関する規制体系
核燃料輸送物の分類例
プルトニウム輸送と護衛
主な放射性物質の輸送事故
主な核燃料物質の輸送事故
主要な核燃料物質移動量

14.エネルギー
日本のエネルギー供給の推移
長期エネルギー需給見通し
電力供給計画
日本の発電設備
年度別電灯電力使用量
8月の電力需要
需要ピーク時の電力供給
2003年1月の各社最小電力と原発容量
電源別の発電量と余力
電力9社(北海道〜九州)最大・最小電力時の需給調整
日本のエネルギー・フロー
超長期にみた世界のエネルギー需要と化石燃料の供給曲線
世界のエネルギー資源の可採年数
世界のエネルギー資源の確認埋蔵量
世界各国の風力発電の設置増加状況
各国のエネルギー研究開発予算

15.核融合
核融合プラズマの閉じ込め方式と研究機関
3大トカマク型装置の概要
国際熱核融合実験炉(ITER)計画の概要
ITER建設に向けたスケジュール
ITER最終設計報告書案の概要
ITERの概念図
ITERの建設・運転スケジュール
ITERのコストと誘致国の負担
軽水炉と核融合炉の除染後の放射性廃棄物量の比較

16.その他
官公庁・電力会社等の所在地
原子力Webガイド
原子力関係略語表
元素記号表
放射性核種の壊変系列
単位諸元
年表
キーワードで検索する図表索引


・巻頭論文「『もんじゅ』判決から珠洲・巻原発計画断念まで――2003年原子力事情」
               西尾 漠/原子力資料情報室共同代表
・巻頭論文「東京電力のずさんな原発管理実態――管理区域廃棄物の処分問題」
               武本和幸/原子力資料情報室理事・刈羽村を守る会

 2003年は1月27日の「もんじゅ」判決で明け,4月15日には東京電力の全原発停止があり,12月5日の珠洲原発計画断念,同24日の巻原発計画撤回で年末を迎えた。新しい時代状況が生まれていることを如実に示した1年だった。
 1月27日,名古屋高裁金沢支部は,高速増殖炉「もんじゅ」の原子炉設置許可が無効であることを確認する判決を下した。2000年3月22日の福井地裁判決とは180度違う判決である。福井地裁は「もんじゅ」について「電力源の開発という有益性は明らか」だとし,その有益性は「社会的に無視できる程度の危険性を正当化するには十分」だと断じた。これに対し名古屋高裁金沢支部は,「もんじゅ」の危険性は決して「無視できる程度」ではなく,重大な事故の発生を否定できないと認定した。判決には明示されていないが,根本に「もんじゅ」の有益性の否定があることは疑えない。
 実際には2000年の時点で,すでに高速増殖炉の開発の意義は失われていたが,裁判官の頭の中にはすんなり入っていなかった。それが,年を追うごとにいよいよはっきりしてきたのである。日本の原子力開発の基本をなす「核燃料サイクル」の考えがまったく破綻していると,誰の目にもわかる時代状況が,高裁での逆転判決を生んだと言ってよいだろう。

長期需要低迷と離脱需要

 東京電力の全原発停止は,後に次々と運転再開が強行されてしまったとはいえ,多くの原発が止まったままでも電力の供給に支障がないという事実を雄弁に証し立てた。「電力の消費を抑えれば,原発は止められる」と,これまた誰もに確信を抱かせたのである。その背景には,1990年代以降に顕著になった「長期需要低迷」(2002年1月31日付「電気新聞」見出し)がある。やはり新たな時代状況である。
 そして,いわゆる電気事業の「自由化」の進展によって,電力会社の虎の子の「需要」が新規に参入してきた電気事業者や他の地域の電力会社に奪われるという,新たな時代状況になっている。

巻頭論文「『もんじゅ』判決から珠洲・巻原発計画断念まで――2003年原子力事情」
西尾 漠/原子力資料情報室共同代表

 2004年2月6日,東京電力柏崎刈羽原発は,従前は「厳格に管理されている」と宣伝していた放射線管理区域の廃棄物が,管理区域外に搬出され焼却・埋設されている事実を認め,反対運動の指摘を追認しました。東京電力のずさんな原発管理実態を,2003年秋以降に判明した柏崎刈羽原発の放射線管理区域の廃棄物処分を例に報告します。これは,東電のみならず,全国の原発に共通のことでもあると考えます。
 2003年4月,東京電力の原発17基全部が停止しました。そして電力危機キャンペーンが繰り返され,ひび割れ原発の運転再開を目指して,再発防止策を講じたと宣伝が繰り返されていました。その最中の10月,圧力抑制プールからの異物事件が発覚しました。足場の鉄パイプや電動グラインダー,作業靴等が次々と発見されました。原子力を容認できないと反対運動を続けてきた私たちですら,東京電力のタテマエ説明「放射線管理区域の物品は厳格に管理している」を信じていました。この「信頼」は,管理区域の圧力抑制プールからの異物事件で,打ち砕かれ,運動を担う者の「甘さ」を痛感,反省しました。
 かねてより,私たちの元に「東電発表は事実と異なる。放射性の廃棄物を持ち出し,敷地内外で焼却・埋設している」との情報が寄せられていました。そこで,その事実を,冒頭に記したように東電や国に認めさせたのです。しかし,東電は,作業員が「汚染が確認されると,対象物を細分化し,非汚染物に紛れ込ませて搬出した」と証言しているのに「放射線管理区域の廃棄物処理は不適切だった。搬出は汚染のないことを確認した」と説明しています。保安院も2月からの定期保安検査で「管理区域の廃棄物処分の実態は確認したが,汚染物の確認はできなかった」としています。
 原発ではしばしば,大小さまざまな事故が起っていますが,そのたびに「事故があったが放射能は出ていない」との発表を繰り返してきました。未だ「廃棄物の減量のため,意図的に汚染廃棄物の持ち出しがなされていること」を明らかにすることは,できていませんが,政府や電力会社のタテマエ説明を覆すことは一定の成果が得られたと考えます。

巻頭論文「東京電力のずさんな原発管理実態――管理区域廃棄物の処分問題」
武本和幸/原子力資料情報室理事・刈羽村を守る会