An Anthology for Posterity―― 未来の子どもたちに伝えるアンソロジー
世界は変えられる
TUPが伝えるイラク戦争の「真実」と「非戦」

TUP:Translators United for Peace(平和をめざす翻訳者たち) 監修
定価1800円+税
四六判 上製 240ページ
ISBN 4-8228-0480-1


       
 

考えて欲しいこと

まえがき

第1章 イラク戦争

―― 戦前
平和のモカシン〜イロコイ女性長老のアピール カンティネタ・ホーン
世代を超えて続く、イラクの劣化ウラン被害 ダグ・ロッキー
*ブッシュ、ラムズフェルド、ブレア、ストローは聖誕教会立ち入り禁止

―― 戦中
*ある父親の死 スヘア・ミケル
イラク人戦没者の扱いにアメリカの不名誉を見る ジャック・マイルス
ドイツ人考古学者からのバグダッド便り ヴァルター・ゾンマーフェルト

―― 戦後
ベテランCIA高官が暴く大量破壊兵器疑惑の真相 〜9.11からイラク侵攻まで レイ・マクガバン・インタビュー〜 ウィリアム・R・ピット
路上にて 〜元通訳マジン・ジャマー、無名の男の死を語る〜 デイヴィッド・ヒルファイカー
イラク女性は国際女性デーを祝えるか メディア・ベンジャミン
石油のために死ぬのはイヤだ ジェイ・シャフト
兵士たちよ、人間らしさを手放すな 〜親愛なるイラク駐留の兵士たちへ〜 スタンン・ゴフ
日本女性こそイラクの女性支援の適役だ 〜ベアテ・シロタさんからのメッセージ〜 菅原 秀

第2章 アメリカという問題

父と子のQ&A 〜アメリカの外交政策とイラク侵略をめぐって〜 アナーチー・バンカー
マイアミ市街戦のタンク・ガール 〜米州自由貿易圏マイアミ会合レポート「未来の断片」〜 レベッカ・ソルニット
ダボスに現れた“裸の王様” 〜バブルの内側で〜 オーヴィル・シェル
企業支配拡大に戦争という口実 〜世界最大企業ベクテル〜 ヴァンダナ・シヴァ
帝国の野望 〜ノーム・チョムスキー・インタビューから デイヴィッド・バーサミアン

第3章 過去と未来に視野を広げて

満州とイラクの関係 〜歴史に見る占領〜 ジョン・W・ダワー
もう一つの9・11事件 〜悲劇の教訓〜 アリエル・ドルフマン
地球を覆う米軍基地戦略 〜アメリカの軍事基地帝国〜 チャルマーズ・ジョンソン

第4章 希望の種

クリスマス休戦 〜『塹壕のクリスマス〜 デイヴィッド・G・ストラットマン
*塹壕のクリスマス ジョン・マカッチョン
世界は変えられる 〜英国奴隷解放史〜 アダム・ホークシルド

あとがき

翻訳者紹介
著者紹介


まえがき

 二〇〇三年三月、国連安全保障理事会の最終承認を得ないまま、米英主導のイラク攻撃がはじまろうとしていました。国連中心を唱えていたはずの日本政府も、国際紛争の平和的解決を誓った憲法はもちろん、第一条に武力行使の抑制と国連重視を明記した日米安保条約さえ踏み越えて、開戦支持の構えです。にもかかわらず日本のマスコミ報道は、9・11事件の余波でブッシュ政権に逆らえない米国大手メディアの受け売りが多く、事態を深く幅広い視野から見つめるための充分な材料を提供できているとは思えませんでした。
 しかし、同じ英語圏でも英国メディアや各国の独立系サイトには、もっと多面多層的な情報が溢れていて、この戦争の必要性も正当性も疑わしいばかりか、世界をいっそう不安定化させかねないことが読み取れました。これは9・11以来、ずっと続いてきた情報と真実の大きな亀裂です。もちろん英語圏の外に出れば、アメリカ政府べったりの世界観はさらに孤立しているでしょう。日本と日本人が二一世紀をより良く生きていくには、亀裂の片側の偏った情報に頼るだけでは危なすぎる ―― そんな危機感から、インターネットで呼びかけ合った一〇人足らずの有志が、TUP(Translators United for Peace=平和をめざす翻訳者たち)を発足させました。
 国内外に散らばる初対面(Eメール上)のメンバーが、まず作業用と配信用のメーリングリストを開設し、これはと思う海外記事や論考を翻訳して、「TUP速報」という形で無料配信を開始。それから一年あまり、手探りで三〇〇本以上の速報を送り出し、巨大なネット空間の一画に、ささやかながら信頼される独立メディアの足がかりをつくることができました。本書は、その中から評価の高かった内容を厳選して、インターネットを使わない人たちにも読んでいただけるよう編んだアンソロジーで、今後シリーズ化の予定です。
 TUPは二〇〇四年五月現在、翻訳作業用のメーリングリスト参加者が四〇人ほど、「TUP速報」の登録購読者は一六〇〇人を少し越えたところです。メンバーの翻訳能力はプロ級から初心者まで千差万別ですし、翻訳はせずに記事の紹介や資料整理の形で参加する人もいます。また、本書に何篇か含まれているように、都合で退会した人、メンバーではないけれどゲストとして訳文を寄せてくれる人もいます。
 一貫して心がけているのは、イラクだけでなく地球全体から戦争をなくすために、深く実践的な思索の材料を提供すること。いっぽう、あまり過激な陰謀説の類には飛びつきませんが、現代の国際情勢を理解するには相当踏み込んだ見方も必要なので、ときには異端的な分析を取り上げることもあります。アマチュアで無償のボランティアですから、内容の検証や訳文の質にはおのずと限界があるのも確かです。しかし、インターネットは惑星大の頭脳といわれるように、日々戦争と平和の問題を考え続ける人びとが発表したものを、日々読み続ける目の肥えた人びとが取捨選択して残る論説は、ときに一国の政治家や評論家をはるかに超えた精度と先見性を持ちえます。TUPはそうした地球市民の協働効果を活用して、知ることが希望と力になるような事実を掘り出したいと願っています。本書やTUP速報のバックナンバーから成否を判断してください。
 その意味で、マスコミはTUPの敵ではなくライバルです。TUPが健闘することで、本職のジャーナリストたちがもっと奮起し、行政・司法・立法の三権をチェックする第四権力としての自覚を強めてほしいと思います。さもなければ、TUPをはじめ台頭しつつある独立系メディアが、さらに成長して民主社会を下支えすることが必要でしょう。
 本アンソロジー編集にあたり、TUP速報時の紹介文(原文解説および訳者寸評など)は基本的に省いたほか、抄訳を全訳し直したものや、メンバーがTUPと同じ主旨で他の媒体に発表したものも数篇収めました。

星川 淳(作家・翻訳家)


『世界は変えられる』(書評1)

 2003年3月、イラク攻撃が始まろうとしていたとき、マスコミが取り上げにくい海外記事を邦訳して、無料配信する独立系メディアとして誕生したのがTUPだ。国内外の翻訳者たちがインターネットを通じて、これはと思う論考や記事を無償で翻訳し、速報してきた。本書はこれまで配信した300本あまりの中から、評判の高かったものを厳選した20余編のアンソロジーで、内容の深さ、読み応えは十分だ。
 「ドイツ人考古学者からのバクダッド便り」や「ベテランCIA高官が暴く大量破壊兵器疑惑の真相」など、事実の重さと量に圧倒される。「父と子のQ∩A」は、子の容赦ない質問攻めの形でアメリカの外交政策とイラク侵略の本質を暴いて秀逸。ヴァンダナ・シバは「企業支配拡大に戦争という口実」の中で、私たちの課題は、自由の本当の意味を取り戻すことだと書いている。
 「情報と真実の亀裂」への危機感が、日本に優れた独立メディアを生んだことがうれしい。「地球市民の協働効果を活用して、知ることが希望と力になるような事実を掘り出したい」という。(T)

「ふぇみん」2004年8月15日


『世界は変えられる』(書評2)

世界の反戦情報を伝えるメルマガ本が、JCJ市民メディア賞受賞

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)の第2回「市民メディア賞」が「世界は変えられる」(七つ森書館 1800円)に授与された。
 受賞作は、元米国防総省劣化ウランプロジェクト責任者や日本政策研究所長などの証言、論考20本をまとめたアンソロジー。監修したのは,イラク戦争開始直前の昨年3月にインターネットを通じて結成された翻訳者たちのグループ(TUP)でマスコミに出ない海外記事から反戦に役立つ情報をえりすぐって翻訳し、メールマガジンで無料配信してきた。その中から特に重要な情報を厳選した受賞作は、新しい情報ツールを駆使した市民のメディアとして評価された。賞の贈呈式は2004年度JCJ賞と共に、8月14日(土)日本プレスセンター・ホールにて。

「日刊ゲンダイ」2004年8月10日


『世界は変えられる』(書評3)

 世界を変えるジャーナリズム、独立系メディアTUP速報数百遍から厳選された20余篇からなるアンソロジー。TUPはマスメディアが取り上げにくい、海外の多面・多層的な情報をすばやく邦訳。配信する目的で結成された。ヴァンダナ・シヴァ、ノーム・チョムスキーをはじめ、「イラク戦争」を起点に平和を希求する支配側・被支配側の民衆の声、平和な世界を創るために役立つ論考などを所収。「疑ってはいけない。思慮深く、献身的な市民たちのグループが世界を変えられるということを。かつて世界を変えたものは、実際それしかなかったのだから。」(マーガレット・ミード――帯より)JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞推薦作品。

「WOMAN'S EYE」 2004年8月1日


『世界は変えられる』(書評4)

 TUP(平和をめざす翻訳者たち)は、イラク攻撃に危機感を抱き、日本のメディアが取り上げ難い海外記事をすばやく翻訳・配信する目的でインターネットを通して結成され、本書は戦争の悲惨さや無視された戦争の背景など世界の声を掲載する。

「季刊 アラブ」 2004年12月


『世界は変えられる』(書評5)

 独立メディアTUPが配信した300本あまりの中から厳選した作品を翻訳し直したものと、新たに翻訳したエッセイ、論考などからなる20余編のアンソロジー。「イラク戦争」を起点とし、占領する側とされる側の民衆は何を考え発信しているのか、隠された「真実」とは何か。

「自然と人間」2004年7月号


『世界は変えられる』(書評6)

 日本ジャーナリスト会議の「市民メディア賞」を受賞した独立系市民メディアTUP(Translators United for Peace、平和をめざす翻訳者たちの略)前作「I」に続き、イラク戦争の真実を伝えた数々のメールマガジンの中から、TUPの発信したニュースやコラム25編を収めた。
 テレビなど大メディアや政府が流す情報からは、伝えられてこなかった「戦争の真実」を伝える独立系市民メディア。インターネット社会ならではの活動だが、その与える影響は大きい。翻訳者には、屋久島に住む星川淳氏らが名を連ねている。

「南日本新聞」2004年12月12日