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暗闇のなかの希望 レベッカ・ソルニット 著 |
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日本のみなさんへ 1 暗闇を覗きこむ 2 視点を変えて語る 3 絶望と不満、あるいは壁と扉 4 わたしたちが勝ち取ったもの 5 千年紀の到来:1989年11月9日 6 千年紀の到来:1994年1月1日 7 千年紀の到来:1999年11月30日 8 千年紀の到来:2001年9月11日 9 千年紀の到来:2003年2月25日 10 変革のための想像力を変革する 11 直接行動の間接性について 12 天使が見せたもうひとつの歴史 13 カリブーのために処方するバイアグラ 14 失楽園 15 北米大陸分水嶺を超えて 16 イデオロギーの後に 17 グローバルなローカル 18 中断――世界が燃えている 19 テキサスの三倍大きな夢 20 疑い 21 世界の中心への旅 訳者あとがき |
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■1.暗闇を覗きこむ より 第一次世界大戦に突入して六か月、ヨーロッパ全土が殺し合いの渦中にあった一九一五年一月一八日、ヴァージニア・ウルフは「未来は暗闇に包まれている。概して、未来は暗闇であることが一番いいのではないかと考える」と日記に記した。彼女は、見通せないという意味で暗闇と言ったのであり、恐ろしいという意味ではなかったようだ。わたしたちは、これをしばしば取り違える。つまり、未来が不可知であるということを、なにか確定したもの、恐怖の実現、道が途切れた行き止まりと置きかえてしまう。だがいつも、世界の終末よりもはるかに予想外のことが起こるものなのだ。二〇年前、ソ連が消滅したり、インターネットが出現したりする世界を、だれが想像しただろう? 当時、南アフリカの体制が変わり、政治囚だったネルソン・マンデラが大統領になるなどと、だれが夢想しただろう? ほんの一例にすぎないが、メキシコ南部で蜂起して、もっとも広く名を馳せたサパティスタ国民解放軍をはじめ、先住民の世界がこれほど盛んに復活すると、だれが予測しただろう? 四〇年前、白人以外の者や男性以外の者、また同性愛者の地位がすっかり変わったり、権力や経済、自然やエコロジーをテーマに自由で開かれた対話がおこなわれたりするようになると、だれが想定しただろう? …… 因果の法則は、歴史をとうぜん前進するものであると仮定しているが、あいにく歴史は軍隊の行進ではない。歴史は急ぎ足で横這いするカニ、あるいは石を穿つ、やわらかな水の滴り、数世紀かけて蓄積した地殻の歪みを解き放つ地震なのだ。たったひとりの人がある運動に活気を与えることもあれば、ひとりの人の言葉が、数十年も後になって実を結ぶこともある。ときには、少数の熱烈な人びとが世界を変え、大衆運動を先導し、数百万の人びとの行動を招きよせる。ときには、その数百万の人びとが憤りや理念を共有し奮起することで、あたかも天気が変わるように、世界が変わることもある。すべてに共通していることは、想像することや、希望を育むことで、変化ははじまるということ。希望をもつということはギャンブルである。希望をもつということは未来や欲求に賭けることであり、開かれた心や不確かなものが、塞いだ心や安全なものに勝るかもしれないという可能性に賭けることなのだ。生きることじたいが冒険なのだから、希望をもつということは危険であり、それでいて希望は恐怖の対極にある。 …… あらゆることが起こりうるが、それが起きるか否かはすべて、わたしたちが行動するかどうかにかかっている。なまけ者や無関心な人は宝くじさえ手にすることはできないが、積極的にかかわろうとする人には、いまのいま、途方もない最高賞金獲得のチャンスがある。わたしがあなたにこのように言うのは、現状に気づいていないからではない。わたしたちのアメリカが、自己破壊に走り、帝国の拡大を世界に求め、国是として支持してきた価値のすべてを破壊し、国内のデモクラシーを窒息寸前にまで締めつけていること、そして、わたしたちの文明が、人間の生存基盤である自然そのものと、海や大気と、数えきれない種類の植物と虫と鳥とを絶滅間際に追いこんでいることに気づいているからこそ、わたしはこう述べる。戦争は勃発するだろう。惑星地球はさらに加熱するだろうし、生物の種も絶滅するだろう。でも、どれくらい多くの戦争が勃発するのか、この惑星がどれほど熱くなるのか、あるいはどの種が生き残るのか――それらはわたしたちの行動にかかっているのだ。未来は暗闇。墓のなかも暗闇だが、子宮のなかも、同じように深い暗闇である。 わたしは、この本で、どのように変化が生まれるかについて、新しい見方を示したい。見過ごされている勝利をいくつか数え上げ、わたしたちの住む世界の激変ぶりを測り、多くの活動家たちが引きずっている思い上がりをとっぱらいたい。この時代、この地上にある可能性と不思議と危険とにふさわしい想像力を道連れにして、はじめからやり直したいと思うのだ。 |