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会社学入門 実学のすすめ
奥村 宏 著 おそらく21世紀のなかばころには新しい企業が株式会社に代わって擡頭してくるだろう。そうでなければ人類に未来はない、といってもよい。どのように会社を変えていくか、ということを議論するためにこそ会社学は必要なのである。 (本書「第8章 実学への道──考えながら読む」より) |
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はしがき 第1部 現実から学ぶ 第一章 現実の経済から学ぶ ── 高橋亀吉 第二章 「シロウトの経済学」── 石橋湛山 第2部 実学のすすめ 第三章 実学とは何か ── 福沢諭吉と南方熊楠 第四章 なぜ実学が必要なのか ── 現実から遊離した経済学 第五章 誤った実学 ── 株の経済学 第3部 会社学への通 第六章 会社学の提唱 ── 株式会社の研究 第七章 交響楽的社会科学 ── 森嶋通夫 第八章 実学への通 ── 考えながら読む 第九章 何のための学問か ── 御用学者の群れ |
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はしがき 日本の経済や社会、そして国家を動かしているのは会社であり、多くの日本人は「会社人間」になっているといわれる。 そうだとすれば会社を研究する学問、すなわち「会社学」が必要なのだが、不思議なことにそういう学問はない。国家については国家学、そして人間については人間学、あるいは人類学があるように、会社についても会社学が必要なのではないか。 そういう考えから私は会社学を提唱しているのだが、そのためにはどうすべきか。それはアメリカやヨーロッパから出来合いの理論を輸入するのではなく、日本の現実から出発して理論を作り出していくことが必要である。だいいちアメリカやヨーロッパにも会社学というような学問はないのだから。 会社学は現実から理論を作り出していくという意味での「実学」でなければならないが、日本の経済学や経営学、さらに社会科学全体がそうはなっていない。 このような日本の学問のあり方に対して私はかねてから不満をもっていたが、いま会社学を提唱することで「実学」を打ち立てていこうと考え、この本を書いた。抽象的に論じたのではわかってもらえないので、私のこれまでの経験を混じえながら具体的に述べた。 第1部では、日本の現実から出発してそれを理論化する努力をした先人として高橋亀吉と石橋湛山を取り上げ、彼らがいかに苦心したか、ということを書くとともに、実学が陥りがちな落し穴についても触れた。彼らはいわゆる学者ではないが、会社学のためには会社評論が必要であり、彼らはそのパイオニアとしての役割を果たしているからである。 第2部では、私の考えている実学とはどういうものか、そして、なぜ実学が必要なのか、ということを福沢諭吉や南方熊楠などを取り上げて説明するとともに、誤った実学にも触れた。 そして第・部では会社学を作っていくためにはどうしたらよいか、ということを考えるとともに、日本の学問、そして学者のあり方を批判した。 登場する人物の発言について、私の印象で語るのではなく、できるだけ客観性をもたせるために原文から引用したが、引用文中カッコ内は私がつけ加えたものである。 この本で「実学」というのは、「実業に役立つ学問」あるいは「実利につながる学問」という意味ではなく、現実に立った学問という意味である。そして「会社学」というのは会社を総体としてとらえようとする学問のことである。 会社学は、会社で働いている人はもちろん、会社に関心のある人たちによって打ち立てられるべきものだが、そのためにはどうしたらよいか、ということについて私の考えを述べたのがこの本である。会社学を体系的に展開する仕事は次の課題だが、いずれそれをやりとげたいと願っている。 この本を私の最大の師であった故森嶋通夫先生に捧げる。 二〇〇七年夏 奥村 宏 |