佐高信の甘口でコンニチハ!
五七五と日本人

佐高信 著
定価 1800円+税
四六判 上製 206ページ
ISBN978-4-8228-0876-1 C0036


16人の多彩なゲストを迎える〈わび・さび〉対談──辛口評論家などといわれる私も無闇に刀を振りかざしているわけではない。「敵」「味方」は峻別しているのであり、「味方」との充実した対話によって・斬人斬書・のエネルギーを蓄えているのである。(「はじめに」より)

●著者プロフィール
佐高 信(さたか・まこと)
1945年山形県酒田市生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、郷里の高校教師、経済誌の編集長を経て、評論家となる。「週刊金曜日」を発行する株式会社金曜日の代表取締役社長。
主な著書に、『城山三郎の遺志』(岩波書店)、『魯迅烈読』『逆命利君』『面々授受─久野収先生と私』(岩波現代文庫)、『佐高信の毒言毒語』(講談社文庫)、『石原慎太郎の老残』『田原総一朗への退場勧告』(毎日新聞社)、『城山三郎の昭和』(角川文庫)、『西郷隆盛伝説』(角川学芸出版)、『拝啓 藤沢周平様』(田中優子との共著、イースト・プレス)、『抵抗人名録』(金曜日)、『追悼譜』(ちくま文庫)、『蟻食いを噛み殺したまま死んだ蟻』(田中伸尚との共著)『会社事件史』(奥村宏との共著)『100人のバカ』(岡留安則との共著)『われら63歳 朝焼けを生きる』(落合恵子との共著)『詩歌と俳句の湧き口』『佐高信の甘口でコンニチハ!』(七つ森書館)ほか多数。


はじめに 佐 高 信

堀田 力【福祉財団理事長】年に一句、年賀状に詠む
田丸美寿々【ニュースキャスター】アナウンサーは言葉を削ぎ落とし、絞り込みます
寺島実郎【研究所会長】藤野先生と魯迅の関係が心に響く
阿川佐和子【作家】型破りの家に生まれた面白さ
渡辺 保【歌舞伎研究・批評家】久保田万太郎、山本健吉、安東次男に学ぶ
小沢昭一【俳優】俳句は、お互いがお互いを理解する助けになります
佐佐木幸綱【歌人、国文学者】牧水も啄木も、負け札を選び続けたんです
吉永みち子【ノンフィクション作家】異端児のダービー馬に全身が震えた
小室 等【シンガーソングライター】歌は、「携帯する晴れ」でありたい
織作峰子【写真家】作品を作る上でウエットな部分がとても大切です
山田太一【脚本・小説家】大学の時の寺山ショックで散文を選んだ
嵐山光三郎【作家・エッセイスト】芭蕉の本業は水道開削官だった!?
二宮清純【スポーツジャーナリスト】子規は最初のスポーツジャーナリスト
金 時鐘【詩人】故郷済州島は愛がうずいている島
佐藤友美【女優】納得できるまで手抜きできません
坪内稔典【俳人】「月給四十円」は写生の極致

はじめに
          佐 高 信

 「佐高さんの筆は敵には容赦ないが味方にはこのうえなくやさしい」
 これは、私以上に「敵には容赦ない」 上野千鶴子さんが拙著『抵抗人名録』(金曜日)に寄せてくれた言葉である。
 しかし、ジェンダー・バッシングを受けている彼女も、あるいは辛口評論家などといわれる私も無闇に刃を振りかざしているわけではない。「敵」「味方」は峻別しているのであり、「味方」との充実した対話によって・斬人斬書・のエネルギーを蓄えているのである。
 その上野さんや井上陽水さんたちとの対談を含む『俳句界』での「甘口でコンニチハ!」の第一弾は『詩歌と俳句の湧き口』と題して七つ森書館から出た。
 これはその第二弾である。
 ロッキード事件の・鬼検事・として知られる堀田力さんから始まるが、私は堀田さんがカラオケで「大阪で生まれた女」を歌ったのを聞いている。なかなかのうまさだった。
 国際問題でシャープな発言をし、五七五の俳句とは無縁と思われる寺島実郎さんが、実は、俳人だったお祖父さんを通じて俳句に親しみをもっているというのも意外な発見だろう。
 小室等さんが永田耕衣に惹かれているというのも驚きだった。確かに、友人だからとて、好きな俳人はなどと日常会話で尋ねることはない。
 だから、この対談は私にとって、友人や先輩、知己についての知られざる発見の連続でもあったのである。
 山田太一さんとのそれは、共通性の確認という意味合いもあった。私との共通性と言っては不遜だが、山田さんと藤沢周平さんの共感性である。
 山田さんは好きな句として久保田万太郎の、

     今は亡き人と二人や冬籠

 を挙げた。山田さんより七歳上の藤沢さんは、

     枯野はも縁の下までつゞきをり

 で、万太郎が「忘れえぬ作家」となると言っている。
 山田さんとは、私が経済誌の編集部にいた時代から、もう三十年ものおつきあいをいただいているが、能村登四郎の名が出てきた時には嬉しかった。私も好きな俳人だからである。

     寒き夜のいづこにか散る河豚の毒

 能村のこの句を山田さんは「好きな句」として挙げ、「街の広さ、闇の深さの出たいい句」だと思うと語った。それで私は能村の、

     幾人か敵あるもよし鳥かぶと

 を挙げ、これを年賀状に引いたことがあると答えたのである。
 「うわぁ、すごい句ですね」
 と山田さんは破顔していたが、なかなかに渋い俳人の句が好きというのは山田さんらしい。  山田さんと寺山修司さんの密な交友はよく知られている。いや、知る人ぞ知るだろうか。その寺山さんの競馬についてのエッセイに吉永みち子さんが憧れていたというのも・発見・だった。
 「牧水も啄木も負け札を選び続けたんです」
 佐佐木幸綱さんはこう喝破しているが、佐佐木さんならではの発言だろう。
 独特のアングルから正岡子規を敬愛する二宮清純さんは、子規は血を吐いていたので赤に特別な思い入れがあったのだろう、と想像する。そして、自分も重症の喘息で喉から血が出たりしたので、
 「ぼくが惹かれる歌には必ず赤が入っているんですが、赤に対する情念みたいなものが、ぼくと子規には共通している」
 と告白している。その二宮さんが「大好きな郷土の先輩」として挙げるのが、結びの対談に登場してもらっている坪内稔典さんである。
 これだけが『愛媛新聞』に掲載された点と、私が逆に尋ねられている点で変わっている。
 坪内さんがホストで子規について語るシリーズに羞恥心もなく私もよく出たと思うが、そもそも、ハジライとかを持っていたら、『俳句界』での対談は成り立たない。素人の強みというか、図々しさがウリモノの連載対談だからである。
 それでも、渡辺保さん、小沢昭一さん、嵐山光三郎さん、そして金時鐘さんとの対談は玄人顔負けのディープな味を出せたと自負しているが、前記の吉永さんを加えて、田丸美寿々、阿川佐和子、織作峰子、佐藤友美の各美女との対談からもワビ、サビにつながる味を引き出してもらえれば嬉しい。

   2008年 盛夏