官製貧困社会
自治体の困惑と市民の困窮

布施 哲也 著
定価1500円+税
四六判 並製 本文208ページ
ISBN978-4-8228-0986-7 C0036


『官製ワーキングプア』に続く「官製三部作」の第2弾!
現職の熱血市議が豊富な経験で緻密に分析する。
「地方自治を破壊するのは大企業と国家官僚だ」

▼著者プロフィール
布施 哲也(ふせ・てつや)
1949年、千葉県に生まれる。中央大学(二部)卒業後に民間会社勤務。
狭山事件の再審を求める市民の会、障害者の教育権を実現する会などで活動。
宮武外骨私的研究会・主宰。清瀬市議会議員。
著書『清瀬異聞』(社会評論社)、『武田信玄のキーワード』(有峰書店新社)、『官製ワーキングプア』(七つ森書館)。


はじめに
第1章 官製貧困社会に苦しむ市民
    1 市民がつぶされる
    2 「改革」の誤り
第2章 介護保険と後期高齢者医療制度
    1 介護保険で介護の社会化はどうなったか
    2 後期高齢者医療制度は弱者の切り捨て
第3章 東京と地方の自治体格差
    1 金持ちの東京は政策も突飛
    2 地方は貧困にあえぎ希望をさがす
第4章 自治を破壊する大企業と国家官僚
    1 自治体財産に触手を伸ばす大企業
    2 貧困を招く民間委託
    3 硬直化する自治体の組織と財政
第5章 自立した市民層
    1 脅かされる市民と自治体
    2 自立した市民層


はじめに

 日本社会は不況のただ中にあります。国内需要がどうなるかが、そのカギを握るようです。理屈は簡単です。労働者への正当な対価を支払わない社会は、いくらモノを造ろうとも、国民の大多数を占める労働者は、そのモノを買うことができません。こんな社会は、真っ当なものではありません。
 臨時、パート、派遣などの労働者が増えつづけています。民間労働者の三分の一以上は非正規です。そして、自治体をはじめとした公務員の世界でも、その三分の一は嘱託、臨時などという名称の非正規労働者です。公務職場で働く、委託先の民間企業の労働者をそれに加えれば、公務職場では、実に半数ほどとなるでしょう。
 非正規労働者の増加は、これも単純な理屈です。支払う賃金を少なくできて、簡単に解雇できるからでしょう。民間の場合の解雇では、ある程度の制限がありますが、公務職場では反対に、法律が、解雇を後押ししています。法解釈も変わりつつありますが、残念ながら、まだ大勢とはなりません。
 労働基準法第三条には、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と、労働者の均等待遇を規定しています。
 非正規労働者の均等待遇を求める裁判では、基準法は差別的扱いを制限列記したものであり、条文に明確に規定されない限り違反ではないとしています。でも、それは、法務官僚の理解不足です。実社会では、臨時、嘱託、そして派遣などという雇用形態は、法で禁止している社会的身分そのものです。法の常識は、現状追認のはずです。実社会に従うべきです。
 マスコミでは、嘱託職員、期間工、派遣社員、臨時職員などという非正規雇用の名称で、事件の当事者を報道しています。決して何々会社の社員、何々市の職員という、一般的な名称は用いません。これらの非正規雇用の名称は、好むものではありませんが、社会的身分そのものであることを、別の角度から証明しています。
 もうやめましょう。同じ仕事をしながら雇用の条件が違うというだけで、賃金が三分の一や五分の一ということは、民主主義社会であるならば、容認できるものではありません。
 非正規という雇用形態に固執するのなら、それもいいでしょう。それならば、非正規労働者の賃金を引き上げることです。自治体に限れば、まず非正規職員への手当支給です。現に、期末手当などを支給して、待遇改善をしている例があります。条例にはっきりと定めれば、裁判所も総務省も、止めさせることはできません。
 昨年、『官製ワーキングプア』を執筆しました。自治体における非正規雇用と民間委託が、ワーキングプアをつくりだすことを、明らかにするためです。この書が総論であるならば、本書は各論となります。その各論には、自立した市民層の登場を願いました。
 地方自治体が翻弄されるのは、国家官僚と政治家によるものですが、でもその究極の責任は、一人ひとりの市民にあるというのも、また事実となります。問題の解決のためには、どうしても自立した市民、それも層としての市民が必要です。
 本書の出版にあたり、各議会で奮闘する友人の議員諸氏に感謝します。みなさんの奮闘が、執筆の裏づけとなりました。議員は市長をはじめとした自治体の幹部職員と、かなり頻繁に接します。そのため、庶民ではなく、市長たちと仲良くなってしまいます。でも少数ですが、市民自治を実践しつづけている諸氏がいます。その一人ひとりが自立した市民です。