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『官僚たちの夏』の佐橋滋
著 者:佐高 信
『官僚たちの夏』(TBS系・日曜劇場で放映)の主人公・風越信吾こと佐橋滋に「ボクのことはサタカ君の方がよく知っている」と言わしめた佐高信が、異色官僚の人と思想を描き切る。
原作者・城山三郎と主人公・佐橋滋の対談を収録! |
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はじめに ・ あらまほしき官僚・佐橋滋 『官僚たちの夏』と佐橋滋 「異色官僚」の抵抗 賢弟・川原英之 34 「腰越状」を送った三宅幸夫 ハプニング人事 親子の関係 女性キャリア 経済を知らない大蔵官僚 貫いた非武装論 残される課題 大正生まれの結婚 ・ 佐橋滋の交友録 雀友・大平正芳 碁敵・升田幸三 大平会のゴルフ仲間 韻友・小林勇 怪物・山下太郎 詩吟の相弟子など 伊藤肇との浪人談義 ヤンチャな弟・平松守彦 本田宗一郎とのケンカ対面 大人・椎名悦三郎 大原総一郎との関わり 平松守彦の佐橋滋観 焼鳥屋の六ちゃん 賀状の詞 ワハハのオジさん、奥村綱雄 純生日本人への礼状 ・ 対論 通産官僚論 城山三郎・佐橋滋 ・ 対論 現代官僚改造論 久野収・佐橋滋 おわりに |
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はじめに 城山三郎作の『官僚たちの夏』がテレビドラマ化されて評判になっている。 主人公の風越信吾のモデルが佐橋滋だが、佐藤浩市演ずるこの役は、前に中村敦夫でドラマ化されたこともあった。池田勇人がモデルの池内信人、佐藤栄作がモデルの須藤恵作などに風越のライバルの玉木や風越を慕う鮎川、そして庭野がからむ。玉木は今井善衛、鮎川が川原英之、庭野が三宅幸夫と、それぞれモデルは絵解きできるが、何よりも佐橋の魅力について私は改めて読者に伝えたい。 望外にも「ボクのことはサタカ君の方がよく知っている」と当人に言われるほど信頼されていた佐橋の官僚としての思想を私が深く尋ねなかったことについて、私はわが師の久野収から公開の場で非難された。一九九六年七月二十日放送のNHK教育テレビ「未来潮流」でインタビューした時である。次にその遣り取りを引いておきたい。 佐高 先生は官僚制の問題にも、いち早く目を向けておられますね。一九七七年、先生は元通産次官の佐橋滋と対談をされました。戦後の産業育成政策の基礎を築いて・ミスター通産・と呼ばれた人物です。佐橋滋は、一方で、通産省職員の労働組合の委員長をつとめ、官僚制の民主化を試みました。 先生はその時、佐橋滋のつぎのような発言に注目しています。・組織というものはほうっておけば必ず非民主化する。そこでわたしは通産省の政策についても、組合が独自の研究会を持つようにして、官僚組織を民主化しようとした・(「官庁民主化のための労働組合運動を」)。 しかし、この民主化の試みは、佐橋滋氏が委員長を退いた後、受け継がれることはありませんでした。 久野 きみのまずかったのは、佐橋滋の内面の歴史みたいなものを記録にとっておかなかった点ですね。彼は同年の丸山真男の思想と人物を尊重すると言っていましたね。ぼくは、佐橋氏は岸信介と対抗できるだけの存在だったと思いますよ。対抗というのは岸的官僚主義と対抗するという意味です。それで、官庁や官僚における民主化とは何であるかという問題を職業倫理の立場から先頭に立ってやったわけでしょう。 佐高 珍しくキャリア組の出身で組合の委員長をやっていたのですね。 久野 委員長をやって、官僚の民主化をやろうと思ったんだと、彼はぼくに言いましたよね。 佐高 そういう人たちの、佐橋さんなら佐橋さんの哲学がまだ受け継がれていない、わたしもそういうのを書かなかったということかもしれませんけれども……。 久野 佐橋氏にそういう官僚制の病弊みたいなものを、内在的に佐高君はなんで訊いておかなかったかと。彼は佐高君の生き方を大変評価しておったからね。あのとき佐高君はまだ若造だったからね。その若造を評価していました。 佐高 佐橋さんの苦衷がまだわからなかったのかもしれない。 久野 彼は、通産次官から、民間のいかなる役職にも天下らなかった。 ここで話題になっている久野・佐橋対談は巻末に収録したが、佐橋は非武装論の主張でも異色だった。その非武装論は、久野にも学んだものである。 いずれにせよ、佐橋が「異色」の官僚であっては、官僚の存在価値はない。この本を読んで、公の立場に立つ官僚の位置づけを改めて考える素材としてほしい。 2009年7月30日 佐 高 信 |