スローでたのしい
 有機農業 コツの科学

 

西村和雄(京都大学農学博士) 著
定価 1800円+税
四六判 並製 頁 288ページ
ISBN4-8228-0490-9


       

第1章 生きている土
  1 土とはなにか
       月には岩屑しかない
       土はどうしてできるか
       土は生きている
       土はつくられる
       肥沃な土とは
       究極は、不耕起をめざしましょう
  2 土の団粒構造をチェック
       団粒構造とは?
       農作業が楽になる
       誰でもできる団粒構造のみわけかた
  3 土を育てるには
       有機物を知ること
       どんな有機物がよいか
       有機物によって分解がちがう
  4 有機農業にたいせつな二つの法則
       第1の法則――木は木にかえし、草は草にかえす
       有機物と好き嫌い
       第2の法則――生き物には存在する意味がある
  5 育土の具体策
       草を生かす
       草はなんども刈る
       刈敷きの下は
       草は新鮮な有機物
       牧草を利用する
       鋤きこんではダメ
       刈敷きは、いいことずくめ
       草マルチでやるのはは無理か?
       手のかからない草生栽培
       草生栽培について
       4つの気をつけること・
       共栄作物を基本とした間作・混作について
       輪作をする上での工夫
       理想の土の条件は?
       保肥力を高めれば、理想の土にかえることができる
       腐植能力を生かす
       土を育てることは、土壌生物をふやすこと
       育土のための三つの方法
  6 土が育つまで
       ある農家の例
       落ちこみと減収
       鶏、豚、牛、馬、マメ、イネ
       有機物はいちどに分解しない
       生物が有機物を分解
       遅れは取りもどせるか
       有機物は使いわける
       なによりも有機物
       日本の草
  7 緑肥植物
       マメ科
       イネ科
       緑肥作物の使いかた
       土壌生物の移植方法
  8 ボカシ肥のつくりかたと使いかた(農業者編)
       材料と注意
       つくりかた
       仕込みの方法
       ボカシ肥の使いかた
  9 ボカシ肥のつくりかた(家庭編)――生ごみを材料にする場合
  10 ボカシ肥の補足と注意事項

第2章 植物の栄養
    1 栄養のバランス
       栄養の意味
       水耕栽培と養分
    2 植物の必須元素
      (1) 炭素・酸素・水素
      (2) 窒素
      (3) リン
      (4) カリウム
      (5) マグネシウム
      (6) カルシウム
      (7) イオウ
      (8) 塩素
      (9) 鉄・マンガン・亜鉛・銅・モリブデン
    3 必須元素の欠乏と過剰症状
       症状と診断の仕方
       作物と土壌によって欠乏や過剰の出方はちがう

第3章 作物づくりのコツ
   1 作物をうまく育てるには?
       作物は人となり
       サボテンはしゃべる
       作物は故郷が恋しい
   2 ナス科
       ナ ス
         ふるさと/水やりと施肥/仕立てかたのコツ/切りもどし/季節感
       トマト
         ふるさと/湿気はきらい――水分はひかえめに、養分は薄めに
         育てかたのコツ/養分のカリウムは窒素の二倍必要
       トウガラシ(ピーマン)
         ふるさと/育てかたのコツ
       ジャガイモ
         ふるさと/生育の特徴/芋のできかた/育てかたのコツ
         
病気とpH養分はカリウムを肥大期に
   3 ネギ類(ユリ科)
       ネ ギ
         ふるさと/生育の特徴/施肥のコツ/ネギの品種/抽苔(ネギ坊主)
       タマネギ
         ふるさと/生育の特徴/施肥の注意点/タマネギ選びのコツ
       ニ ラ
       ラッキョウ
       ニンニク
   4 アブラナ科
       ダイコン
         ふるさと/間引きのコツ/根の障害の対策
       カ ブ
         ふるさと/生育の特徴/根の障害の対策
       キャベツ
         ふるさと/生育の特徴/じょうずに結球をさせるコツ
         外葉がたいせつ/種のまきどきもだいじ/効能と良品をみわけるコツ
       ハクサイ
         ふるさと/生育の特徴――ハクサイがまくわけ/結球のコツ
         育てやすい土つくりのコツ
       ツケナ類
         ふるさと/生育の特徴/ツケナの種類
   5 ウリ科
       キュウリ
         ふるさと/育て方のコツ/キュウリは疲れやすい
         栄養生長と生殖生長/芽摘みをじょうずにするのがコツ
       カボチャ
         ふるさと/生育の特徴
   6 その他の野菜3種
       ホウレンソウ
         ふるさと/生育の特徴/品種と特性/じょうずな石灰のやりかた
       ニンジン
         ふるさと/育てかたのコツ/根の障害の対策
       イチゴ
         ふるさと/苗の仕立てかた/生育の特徴――受粉
         露地栽培と実のとりかた/完熟イチゴの見わけかた
   7 マメ科
       窒素固定/生育の特徴
       マメと草との競争に打ち勝つには?/マメの分類
       多収と良品をえるコツ
   8 本ものの野菜
       対称性からわかること/調理のしやすさ
       栄養価と味
   9 種の保存方法
       農家から教えてもらった方法/炭酸ガスの効果を利用する
       種の保存方法/注意すること

第4章 病気、虫について
   (1) はじめに
   (2) 朝の散歩でまなぶこと
   (3) 病虫害を避けるには
   (4) 耕種法とは
   (5) 虫
       天敵を利用する方法
       フェロモンの利用
       植物を使う方法
       その他
   (6) 病 気
   (7) まとめ

第5章 ぐうたらの独り言
   (1) 有機農業は異端
    (2) ぐうたら百姓のきっかけ
    (3) 自然は有限なのだ
    (4) 現代農業がみすごしているもの
    (5) 土は生きている
    (6) 土がくたびれたら?
    (7) 害虫の見えないミカン園
    (8) 環境保全型農業について
    (9) 21世紀の「土」の地平
   (10) おわりに

図版/著者自筆


はじめに


 健康でおいしい野菜。それこそがわたしたちの健康を維持するために必要な食べ物として求められるべきものです。こうした野菜をつくろう、生産しようとしてとりくんでいるのが有機農業です。
 有機農業は、農薬や化学肥料を使わずに作物をつくる方法です。この栽培方法でもって日本各地で、そして世界中で、健康でおいしい、なおかつ安全な野菜や穀物・果物が生産されています。日本でも、有機農業の認証制度がはじまって、有機栽培であるという認証を受けた農産物がでまわるようになってきました。ところが、なかなか手にはいらないのが現状です。その理由は、有機栽培に手間がかかるし、病害虫の防除もふくめて、手がまわりかねるのが現状だからです。消費者のなかには、有機栽培でもって自分で野菜をつくってみたい、あるいは自給できるところまで自分で作物をつくってみたい、そういう思いをもっているかたもおられるのです。ただ、農薬や化学肥料を使わずに、どのようにして野菜を育てるのか、どうしたら土が肥沃になるのかといった基本的なことが、残念ながらわかりづらいのです。
 一方で、一坪農園や家庭菜園をされるかたがずいぶんとふえてきました。しかし、世話をする面積がすくないためか、ついつい手をかけすぎるきらいがあります。こうした場合、よけいに養分をやりすぎたり、おおめに農薬を散布してしまったり、すこしでも草が生えたりすると、となりのかたから注意されるといった、好ましからざる問題がおこることがあります。農薬は、なんといってもとりあつかいをきちんと知らないとたいへんなことになりますし、むやみに草を抜くことが、作物や土にとってかならずしもいい結果を生むとはかぎらないのです。
 それに養分のやりすぎは、収穫物に過剰の硝酸態窒素が蓄積することになりかねず、これが弊害を生みだすことにもなります。また、いろんな方面のかたがたから「農薬や化学肥料を使わないで作物ができるわけがない」という声を聞くことよくがあります。こうした疑問や問題を、なんとかしなければならないと、かねてから思っていたのです。
 わたしが大学を卒業してまもない三十数年前、農薬や化学肥料を使わずに、どうやって作物をつくることができるか、作物を支える土をどうやってつくればよいのか? これらの課題を考えだしたきっかけは、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』でした。その後、いろんなかたとの出会いがあって、健康でおいしい安全な野菜を、農薬や化学肥料を使わずともつくれるのだという確信にかわってきたのです。
 しかし、育てるのに手間がかかっては意味がありません。できるだけよぶんな手間をかけずに、誰にでもできるようなやさしい有機栽培の方法はないだろうか。それもしっかりとした裏づけを解説して。
 それが本書を執筆した動機だったのです。
 残念ながら、わたしの本をだしていただいた出版社がリストラされてしまいました。それも、二回です。手許に本がなくなってしまったあとからも、いろんなかたから、「本はもうないのか」「出版しないのか」「在庫をもってないか」と、手紙やファクスをいただきました。しかし、出版の糸口がみつからず、諦めていたのでした。それが、ふとしたきっかけで、京滋有機農業研究会の幹事をなさっている佐伯昌和氏に話をしたところ、七つ森書館を紹介していただき、またたくまに出版の話がまとまってしまったのです。この間余裕がなかったのか、わたしの口癖を忘れていました。
「リンゴは食べごろにならないと落ちない」
 やはり、時期というものがあるのだと、実感しました。
 今回、題名を『ぐうたら農法のすすめ』から『有機農業コツの科学』に改めました。あまり「ぐうたら」でもいけないと思ったからです。「この本ぐうたらじゃないですね。しっかり働かなければって、暗にいってるじゃないですか」そんなことを、あちこちでいわれたこともあって、書名を改めることにしました。これでわたしも、すこしは「ぐうたら」から脱出できそうです。でも、生来の怠けぐせは抜けません。おそらく「明日できることは今日やるな」で、これからもやってゆきそうな予感がしています。
 また、版を改めるたびに内容を加えてきました。部分的に書き改めたのはもちろんですが、「植物の栄養」を一章分追加し、「土の団粒構造をチェック」「本ものの野菜」「種の保存方法」などの節を加え、「ぐうたらの独り言」の章は一新しましたので、わたしの書きたかった内容は、ほぼ網羅できたと思っています。
 ところで、なぜ「ぐうたら」に私がこだわったのかには、それなりのワケがあるのです。ひとつは、「有機農業は手間がかかる。だから規模をおおきくしては、有機物の確保ができず、農業経営としては成り立つものではない」という話を、よくいわれます。じっさい、有機物を大量に確保するのはかなり困難で、労力が必要とされるため、全面的な実施には踏み切れない事情もあるのです。こうした状況をみてきたわたしにしてみれば、「手間のかからない有機農業はどうすれば可能だろうか?」という課題がずっとつきまとってきたのです。
 日本有機農業研究会が発足した、三十数年前。自然農法や有機農業をはじめたパイオニア農家は、言語に絶する辛酸をなめられたのです。村八分・縁者との義絶など、大学紛争もさることながら、すさまじい七○年代の幕開けでした。それでも、命に直接かかわる食料生産の現場としての農業だからこそ、どのような仕打ちを受けようとも、有機農業をつづけてゆかれたのだと思います。パイオニアのかたがたは、有機農業であることに誇りをもって、その辛酸を乗りこえてこられたのだと、思わずにいられません。
 そうしてパイオニア農家のかたがたは、農協や普及員からは白眼視され、農学からの徹底的な批判と無視に耐え、なおかつなんの支援もえられないままに、健康で安全な農産物の生産を目標として、遮二無二、ひたすら有機農業の地平を切り拓いてこられたのです。
 それでも、わたしが訪ねた折りに、ニコニコと微笑みながら、いとおしそうに作物をみやり、土を愛でながらわたしに語りかけ、有機農業のなんたるかをていねいに教えてくださったのでした。
 こうした経緯があったがゆえに、本書のいたるところで「ぐうたら風」とでてくるのは、先人の苦労をすこしでも楽な有機農業にかえたいという、わたしなりのこだわりがあるからです。
 
 省エネ型のノンビリした余生を送りたいと、住み慣れた京都市内から、京都府中部の田園に引っ越しました。そこで究極の「ぐうたら風」を完成させたかったからです。息子は独立し、連れ合いも自分の生きる道をどうやらつかめたようです。連れ合いにはけっして農作業を要請していません。なぜなら「農」という作業は、それぞれの職業にふさわしい適性があるように、ある種のセンスが必要だからです。家族それぞれが自分の才を生きればよいことですから。それが個性ともよべるものだと、わたしは思っています。
 どうやら田園にもなじんできたようです。終の住処は、集落から少し離れた場所で、周囲を小高い丘に囲まれた、小さな谷の突きあたり。毎晩、鹿が一○頭あまり、休耕田を運動場がわりに使っているようです。猪と狸がそれぞれ五頭と、狐が一頭。暗くなると、われらの世界とばかり、わが家のまわりで跳梁しています。真っ暗な農道を帰ってくると、車にぶつかりそうな勢いで鹿や猪が道を横切り、おどかしてくれます。早朝には、雉の夫婦二つがいが農地を散歩しており、「ケンケーン」と甲高い声で、目覚ましがわりにおこしてくれます。その声に誘われるように大急ぎで長靴に足をいれ、朝露にしっとり濡れた畑にゆくと、背丈よりものびたクロタラリアに赤トンボが休んでいました。羽が朝露に濡れ、まだとべそうにありません。朝の太陽が山の際から最初の一閃をなげ、ひんやりした畑がきらきらと輝くとき、すべてがいとおしくわたしの眼に映える至福のひとときです。
 生きていてよかった。毎朝そう思えるのです。
 それというのも、住みついてまもなくガンが発覚したのです。それ以前の数年間に、ひどいストレスを職場で受けていたからだと思います。病気とは、まさしく気を病むものなのだと、そのとき思わされました。そのガンは、膵臓という致命的な箇所に発生し、あと三年の寿命という死刑宣告を受けたのです。奇しくも「気」の治療だけで、完全に治癒したのですが。
 雑草・病原菌・害虫を差別しないという、有機農業にたいするわたしの価値観からは当然なのですが、たとえガンであっても自分のからだの一部である以上、切った張ったの外科手術はしたくなかったのです。むしろガンを生みだしたのもわたしの個性であり、ガン細胞も自分のからだの一部なのだと思って、いっしょに生きようと決心したのです。それは、作物に病気がでたからといって殺菌剤を散布したり、虫が発生したといっては殺虫剤を散布するようなことを、有機農業では絶対にしないのとおなじことなのです。
 抱きとめていっしょに生きようと思っていた矢先、「わたしのなかの暴れん坊」は消滅してしまいました。これからは二度目の人生を生きよう。いやそうするように生かされているのだと気づいたちょうどそのころ、本書の内容を連載しはじめたのです。まさしく自然や世界の見方が一変してしまったころでした。そのあとは、イヤな仕事はしない。イヤな酒も飲まない。可能なかぎり脳天気に、ぐうたらを決めこんで、自然とじっくりつきあいながら余生を送ろうと決めたのです。
 ともあれ、本書の内容を豊かなものにしていただいたのは、パイオニア農家のおかげだったと思っています。また、この本をまとめるきっかけになったのは、松本弘也氏との出会いでした。本書を執筆する五年ほど前から、講演を依頼されたときは、かならずレジュメを書くという習慣をつけていました。以来、書きためていたレジュメをまとめて全日本農民組合京都府総連合会の山中高吉名誉会長にお送りしたものが松本氏の目にとまり、雑誌「進歩と改革」に連載させていただくことになったのです。一九九九年一月からおよそ一年間でした。
「どんどん書いたら」。そういって、落ち込んでいたわたしを励まし、脱出口を開いてくれたのは、京都大学農学部図書室の大月健氏でした。彼が主宰する同人誌「唯一者」が、わたしの危機を救ってくれたのでした。
 その後、有機農業の流通、販売をしている「ポラン広場」の今井登志樹、福地博美の両氏にも、「月刊ポラン」を通じてたいへんお世話になりました。こうしたみなさんのおかげで、わたしの拙い文章が読みやすくなったのです。
 最後になりましたが、本書の初版『ぐうたら農法』にこぎつけたのは、ぱぴるす舎の貝塚隆俊氏と人類文化社の中楚克紀氏のご尽力のたまものです。また、あらたな出版にあたっては、佐伯昌和氏と七つ森書館のみなさんとの出会いがあったからこそです。こうした出会いのすべてに感謝せずにはいられません。ありがとうございました。そして、なにより感謝しなければならないのは、頑固でわがままな孫悟空モドキを手のひらで遊ばせてくれた、連れあいの西村滋子だと思っています。

 欧米では有機農業がさかんです。それというのも欧米では、病害虫のすくないのが理由のひとつだからです。病害虫がすくない理由は、自然がそれほど豊かではなくなったからです。日本をはじめとする、東南アジアのモンスーン地帯では、欧米よりはるかに豊かな自然があります。それだけに病害虫も決してすくなくはないのです。とりわけ日本は、四季の変化がはげしく、冬は亜寒帯になり、夏は亜熱帯になるほど季節がめまぐるしくかわります。そういう意味では豊かすぎるのかもしれません。でも、豊かだということは、病害虫の抑止力も欧米よりはるかにゆきとどくのです。病害虫がわがもの顔にあばれるのを許すほど、日本の自然は寛容ではありません。したがって、病害虫が蔓延することは決してありえないのです。これを利用しないテはないのです。
 さあ、すこし「ぐうたら風」に、手を抜いてはいけないところはがんばって、あとはゆっくりと作物の生育にペースをあわせて、スローでたのしい有機栽培を、スローライフとともにはじめてみましょう。

                二〇〇四年 秋

                 日吉町胡麻の寓居にて   西 村 和 雄

 



『有機農業コツの科学』(書評1)

 まず基本の基である土の育て方。各種の緑肥植物を栽培して、刈り敷き=草マルチを行う。とにかく土壌生物を豊富にしていくのだ。そして、トマト、ジャガイモ、キャベツ、ニンジンなど身近な野菜の栽培方法がていねいに明かされる。これらをいかに手間を掛けずに楽しくやるか。
「有機農業で農薬や化学肥料を使わないという意味は、可能な限り生物の世界を効率よく利用することによって、化石燃料をたいせつに使おうということにほかなりません」。
 ハイリスク・ハイリターン現代農業に対して、ローリスク・ローリターン。土は長い間をかけて生成し、作物は土と長い時間かけてつきあってきた。そういったスローなつきあい方に学ぶべきだと。要は最も自然と調和して、永続的で理にかなった農業をどう営むかだ。エッセイストから突如本格的農家に変身し、信州に移り住んだ玉村豊男氏なら、どう咀嚼応用するだろうか。

「週刊東洋経済」2004年12月4日号


『有機農業コツの科学』(書評2)

 『ぐうたら農法のすすめ』として出版されたものの、出版社のリストラのあおりで、今まで絶版になっていた。
 有機農業に取り組んで30年の著者が「なぜ?」に応え、コツを教えてくれる。
 経験だけでなく、科学的で、理にかなった解説は分かりやすく、再版を待っていたファンも多いだろう。特に、「これから家庭菜園、ガーデニングを有機農法で」という人には最適な一冊となる。
 豊富な図は、著者の自筆で、パソコンで1点1点丁寧に描かれている。

「日本農業新聞」2004年11月28日


『有機農業コツの科学』(書評3)

 京都大学フィールド科学教育研究センター講師の西村和雄博士が、素人でも取り組める有機農業について解説した「有機農業コツの科学」(七つ森書館)を出版した。作物ごとの実践書というだけでなく、農業入門書として楽しめる読み物に仕上がっている。四六判、286ページ、1800円。
 植物栄養学を専攻する西村博士の研究テーマは、手間をかけずにやる「合理的な手抜き有機栽培」。専門家としての長年の研究と、実際に畑を耕すことで、その効果を確かめてきた。
 本書では、以前、西村博士が著した「ぐうたら農法のすすめ」に加筆し、ナス、トマト、ネギなど20種類を超える作物の生育の特徴と適切な育て方を披露。また、土の成り立ちや、土壌中に空気が含まれる団粒構造の重要性、草の刈り方育て方、ボカシ肥料の作り方、微量ミネラルの働きなど、豊かな土をつくることの意義を自然とのつきあい方を交えながら分かりやすく説いている。

「西日本新聞」2005年1月31日


『有機農業コツの科学』(書評4)

 京都大学農学博士の西村和雄さん(59)が有機農業についての30年の研究と実践をもとに「スローでたのしい 有機農業コツの科学」=写真=をこのほど出版した。「手間のかからない有機農業はどうすれば可能か」について追求し、科学に基づいて分かりやすく解説している。出版に協力した市民団体「使い捨て時代を考える会」や「京滋有機農業研究会」のメンバーらは29日午後2時、京都市南区東九条西山王町1の京都府農協会館(JR京都駅八条口から南へ徒歩5分)で出版記念講演会を開く。
 西村さんは京大農学部助手などを経て、現在、京大フィールド科学教育研究センター講師。70年代以降、健康で安全な農産物を目標としてきた有機農業のパイオニアたちと交流し、自らも実践してきた。そのパイオニアたちが異端視され、辛酸をなめながら地平を切り開いてきた姿を見てきた西村さんは「少しでも楽な有機農業にかえること」にこだわってきた。
 著書では、農薬や化学肥料を使わずに、どのようにして野菜を育てるのか、どうしたら土地がひよく肥沃になるのかといった基本的なことを具体的かつ簡潔に記述している。ポイントの一つは「土は作るものではなく、育てるもの」。「育てるとは、有機物をたっぷりと土の中に入れて、土壌生物を増やすこと」だという。
 農業、家庭菜園、ガーデニングの参考書になるが、「農」の読み物としても面白い。

「毎日新聞」2005年1月27日