【新版】
魚をまるごと食べたい
活元運動のすすめ

水口憲哉 著
定価:1800円+税
四六判 並製 256ページ
ISBN978-4-8228-0737-5


頭のてっぺんから、しっぽの先まで──縦横無尽に全国の漁場を飛びまわってきた著者が語る、海と魚とのおいしいつき合い。水口流「魚をまるごと料理」も収録。

 

『新版 魚をまるごと食べたい』に寄せて

序章  魚をまるごと食べたい
    頭の先からしっぽの先まで、皮から骨まで
    生まれる前から親まで、その一生を
    魚の生きている水の中から口に入れるまで

第1章 おいしい魚を食べたい
  1 やっぱりタイは美味なり
    味噌汁、浜焼き、祝島の膳
    タイといってもいろいろ
    『鯛のお料理』(一九○六年刊)はすごい
  2 おいしかった魚
    忘れられないあの味この味
    まだまだ続くおいしい話
    期待したほどではなかったもの
    幸せな魚の食べ方
  3 お金を出せばおいしい魚は食べられるか
    近所の魚屋さん
    つき合っている漁師さんの魚は食べられない
    いちばん高い魚は何か
    安くておいしいもの
    鮭弁の苦労
    食べたい魚と食べさせられている魚
    楽しくない魚の食べ方
    日本における魚の食べ方

第2章 魚の生ぐさくて人間くさい話
  1 シジミ
  2 ホッキガイ
  3 イシダイ
  4 ウマヅラハギ
  5 オイカワ
  6 テナガエビ
  7 バイ
  8 マダコ
  9 イセエビ
  10 スルメイカ
  11 キンメダイ
  12 ハタハタ

第3章 どうして魚はおいしいのか
  1 食べ物で決まる魚の食味
    栄養ピラミッドと植物プランクトンを食べる魚
    付着藻類(苔)を食べる魚
    草を食べる魚
    海藻を食べる魚
    動物プランクトンを食べる魚
    クラゲを食べる魚
    おいしいものを食べている魚はおいしい
    ブリはもともとイワシを食べている
    共食いに限りなく近いトロの味
    おいしいとはどういうことか
  2 食べられない魚はない
    「食べない」のと「食べられない」との違い
    天敵、捕食者は必ずいる
    魚のゲテモノ食いには負ける
    釣り餌はうまい
    皮から骨まで食べる
    生殖巣、稚魚、若魚、親魚、そして死体まで

第4章 水口流「魚まるごと料理」
  1 季節の魚
  2 季節になると食べたくなる料理
  3 干して食べる
  4 漬けて食べる
  5 豆と海藻と小魚
  6 朝鮮料理三種

第5章 風土を活かし魚を楽しむ
  1 岩手の乾鮑は世界一
    乾鮑になぜ関心をもつか
    乾鮑の売れ行きはどうなるか
    香港では、いくらで売られているか
    国際化のなかのアワビ漁
  2 これからの増養殖を考えるときのキーポイント
    「増殖」と「養殖」の違いから考えてみる
    岩手の風土に根付いた世界的ブランド商品と海況
    なくならないアワビの密漁
    「がんばらない精神」と岩手の水産
    二枚貝と海藻中心の養殖はすばらしい
    養殖は何が問題なのか
    トラフグ養殖でのホルマリン使用の意味するもの
  3 新たな展開の始まり
    養殖ワカメと天然ワカメについて考える
    新たな展開の始まり──漁協組合員となって
    魚をとりまく風土をまるごと楽しむ

あとがき

『新版 魚をまるごと食べたい』に寄せて

 美味しい魚をまるごと食べたいという気持ちと、美味しい魚を守る人びとの意志は変わりません。
 また、海を守る漁民からのごちそうが特別に美味しいと感じる人びとがいる限り、人と魚のよい関係は保たれます。
 それはよく言われる食べる人と創る(獲る)人の顔の見える関係ということなのかもしれません。
 一二年前に『魚をまるごと食べたい』という本で伝えたかったそのようなことのなかにも、変わるものと変わらないもの、変えられるものと変えられないものとがあります。
 そんなことを見極めることが、一九九五年七月から連載を始めた岩手県漁業協同組合連合会の情報誌『ぎょれん情報』の「羅針盤」での作業でした。自然海岸率日本一の岩手の漁業、養殖業に携わる人びとに語りかけ問いかけられるなかで多くのことを考え学びました。私の岩手の漁業へのかかわりの出発点は二十数年前の陸前高田市における火力発電所建設と干拓埋立てをともなう広田湾開発事業でした。そこで天恵の海を守る漁民の強い意志と、それらがあれば多くの人びとが海からの恵みを楽しむことができるということを知りました。そのような風土や人のつながりから日本一のワカメ生産や、そのワカメを餌とするアワビにおいて歴史的なブランド商品としての世界一の乾鮑が創りだされ続けています。

 このように新たに見えてきたこと、わかったことをこの新版では、「第5章 風土を活かし魚を楽しむ」として提案しました。そこでこれまであったなにげない、ある意味では当たり前の生産者と消費者の関係というか、それを超えた新たな人のつながりのもつ意味に気がつきました。それは、この第5章の「3 新たな展開の始まり」の冒頭「養殖ワカメと天然ワカメについて考える」(「ぎょれん情報」二○○五年六月掲載)に述べられています。
 「平均単価は天然が養殖より一割ほど高いようです。天然ワカメは、歯ごたえが良く香りが高く、一部の人びとには人気があります。重茂漁協で生産されるものを大地の会や生活クラブ生協が共同購入しているのはそのことを示しているのです」
 これは生産者と消費者が再生し創りだした食べものです。このことをやってきた人びとが、特別に話し合ったり連絡し合ったりすることもなく、それぞれの思いで今三陸の海を守ることに、それぞれの地で取り組んでいます。
 このような美味しい魚を食べ続けたいという人びとの思いに触発されて新版をつくりました。