|
要 約
計画されているようなMOX産業の拡大は、プルトニウムの山をつくる
今一般に議論されていることは、核兵器から取り出される膨大な量のプルトニウム、つまり核兵器保有国に250トンほどもあるプルトニウムに集中している。しかし近い将来、プルトニウムをもっと大量に生み出す源は、核エネルギーの民事利用からである。もしMOX産業拡大計画が実現されたら、10年後には核兵器用プルトニウムよりも多い民事用プルトニウムが備蓄されていることになるだろう。というのも分離プルトニウムを加工する施設が少なすぎて、プルトニウムの過剰を防ぐことができないだろうからである。核時代の始まりには、核燃料サイクルを閉じること、つまり原発からの使用済み燃料を再処理することが夢であったが、その結末はこんなものである。
再処理を必要とする理由、つまり増殖炉技術は、実際にはもう廃れてしまった
以前には分離されたプルトニウムは何よりも増殖炉のためであった。いっぽうほとんどすべての増殖炉計画は、おもにコストの急上昇と、解決できない技術的問題から成功しなかった。さらにアメリカが示した増殖炉計画を止めた理由は、プルトニウムの拡散を防ぐということであった。今では日本、旧ソ連、インドだけが増殖炉計画を追求しているが、いずれも予定から大幅に遅れており、規模も縮小されている。
わずかの国々しかMOX産業を始めようとしていない
MOXはウラン・プルトニウム混合酸化物原子炉用燃料である。MOX加工過程には、技術的に3段階ある。
1、プルトニウムを分離するための再処理
2、特別の施設でのMOX燃料集合体の加工
3、MOX燃料集合体の通常の軽水炉での利用
MOX利用は核利用国にとって世界的に認められた、解決済みの基本的な路線だという誤った印象が、しばしば伝えられている。しかし実際には、それはごく少数の国々に限られた話である。
再処理は数ヵ国のためにしか行なわれていない
技術的・経済的関係から、再処理「方式」は次のように識別できる。

|
・ |
西欧・日本方式には、3つの大きな施設がある。ラ・アーグ(フランス)にあるUP2─800とUP3、およびセラフィールド(イギリス)のソープである。ここでは軽水炉(加圧水型炉、および沸騰水型炉)の燃料要素が再処理される。これらの施設は今まで再処理に全面依存してきた数ヵ国、つまり日本、ドイツ、ベルギー、スイス、オランダ、などのために操業されている。フランス自体は部分的にしか再処理に依存しておらず、フランスの燃料要素の大半は再処理されていない。再処理に直接かかる費用、および関連費用が高くつくため、再処理をやっている国々の中でも、再処理を放棄すべきではないかという議論が、度合いはそれぞれ異なるが、行なわれている。特にドイツでは、近い将来放棄する方向に議論が向かいそうである。
|
|
・ |
イギリス方式は、セラフィールドのB205施設で行なわれている。ここでは再処理は必然とされている。なぜならイギリスで主流のガス黒鉛炉の燃料は安定性が悪く、長期間貯蔵できないからである。いまだにこの原子炉技術を使っているのは、イギリスだけである。
|
|
・ |
ソ連方式は、旧東欧圏にも及んでいる。経済的および政治的展開により、この方式はもはや運営されていない。
|

再処理は高い費用がかかり、膨大な廃棄物をともなう
再処理工場は放射性物質が集中するところである。そのうえ、再処理工場は放射能を環境に最も大量に放出する施設でもある。たとえばセラフィールドからの放出は、ソ連が北極海に放出した量と同じ規模である。
西欧・日本方式のシステムでは、放射性物質はすべてそれを送付した側が所有するものである。そこで分離されたウランやプルトニウムだけでなく、高、中、低レベルの廃棄物も、送付者側に返される。返還される物質を処理し、処分するには、莫大な費用がかかる。
MOX燃料集合体加工は、いくつかの施設に集中している
MOX燃料集合体の加工は、分離プルトニウムを所有する原子力発電所所有者のための役務である。
現在ではおもなMOX燃料集合体加工施設は、デッセル(ベルギー)とハナウ(ドイツ)にあり、その他小規模な施設がカダラシュ(フランス)、東海村(日本)、セラフィールド(イギリス)にある。大きな新しい工場がベルギー、フランス、ドイツ、イギリスに計画されている。しかしこれら工場の将来は、MOX利用の費用が高くかかること、技術的困難性、また許可の問題や裁判所の判定などにより不確定である。
MOX燃料加工施設の操業は、労働者と環境へ特別な危険性をもたらす。ウラン燃料加工に比べて高い労働者被曝と事故の危険性、および外的要因に対しての安全性がより低いことなどである。
MOX燃料集合体は、少数の国々でしか使われていない
MOX燃料利用は多額の費用がかかるため、今まであまり利用されてこなかった。大規模利用計画はドイツにあり、20基の原発のうち17基に利用許可が下りる予定である。今日までに7基で利用され、近い将来これが9基に増える。フランスは16基の原発で利用できることになったが、そのうち6基はこの燃料利用の操業許可が下りている。スイスでは2基の原子炉で使われ、後に3基がこれに加わる予定である。ベルギーでは2基で利用が計画されている。日本は小さな実験計画しかないが、もっと大規模な集中利用が、中期的に計画されている。(解説参照)
すべての軽水炉はウラン燃料用の設計になっているため、MOX燃料はある割合でしか使われない。MOXの核物理が不利に働くため、安全余裕が減ることになる。苛酷事故の際には、その結果はウラン燃料だけを使っている場合よりも、かなり深刻な状態になる。
MOXシステムは、大量のプルトニウム輸送を必要とする
再処理工場とMOX燃料加工工場は、限られた場所にしかない。そのためMOX産業は、ヨーロッパ内でも、日本へ向けても、何千キロにも及ぶプルトニウム輸送を必要とする。大陸内輸送はおもに道路で、格別な厳しい安全対策もなく行われる。地元警察や災害対策機関などに、これらの輸送情報が知らされないことが多い。イギリスと日本の輸送は海上輸送で行われる。空輸もある程度行われる。
プルトニウムは特別な容器で運ばれるが、それでも大規模な外的衝撃に対しては、限られた安定性しか保てない。そのため、大量のプルトニウム放出をともなう事故の可能性は否定できない。事故時の危険性だけでなく、通常の輸送にともなう従業員の被曝も忘れてはならない。原子力産業の中で、輸送は最も被曝への防護対策が低い部門である。
再処理やMOX利用がなければ、このような輸送は不必要となる。
MOX利用は廃棄物管理問題を悪化させる
MOX産業を支持する論議として最もよくいわれることは、廃棄物管理を容易にするということである。しかし実際には使用済み燃料要素のたった一パーセント、つまりプルトニウムしか再利用できない。その他の物質はすべて廃棄物として残る。さらに使用済み燃料の直接処分にくらべて、再処理は余分に低、中レベル廃棄物を発生させる。この理由だけでもMOX産業は、いっそう大きな最終処分容量を必要とする。
またMOX使用済み燃料が、ウランの使用済み燃料よりも、高い温度を発生するという問題もある。つまりこれを貯蔵するには、より複雑な対策を必要とすることを意味し、より大きなスペース、容量を最終処分場に必要とするのである。そこでMOX産業により発生する廃棄物管理費用は、使用済み燃料の直接処分よりもかなり高くつくことになる。
MOX産業は基本的な核兵器材料を提供でき、核拡散に貢献する
核兵器はプルトニウム(または高濃縮ウラン)を爆発物として必要とする。プルトニウムは、原子力産業で技術的に発生するどんな同位体構成でも、核兵器級でありうる。つまり通常の原子炉級プルトニウムでも、キロトン級の爆発力を持つ核兵器をつくることが可能である。MOXを核兵器級プルトニウム金属に変換することは、簡単にできる。
転用に対する国際的な保障措置は、転用を事後確認するだけであるため、実質的な力がない。そのうえ現存する国際的な管理機構の中心的存在であるNPTは、1995年で期限が切れる。現在の地球規模的な状況を考えると、これが延長されるか、されるとしてもどんな形で延長されるのか、確実性はない。
再処理とMOX産業だけが、分離プルトニウムの存在を生み出し、分離プルトニウムだけがそれほどの技術的努力なくして核兵器にすばやく転換されうるのである。もしMOX産業が生み出されれば、関わっている国はどこでもいつでも核兵器保有国になれるのである。MOX産業から盗まれたプルトニウムが、他の国やテロリストグループに、核兵器材料として使われる可能性がある。
何をなすべきか
プルトニウムは人間がつくり出した最も危険な物質の一つである。これはその放射能毒性と核兵器に使われるという、両方の点からである。これらの危険性は再処理によってプルトニウムを分離することによって、何倍にも膨れ上がる。
| ・ |
これからの10年に民事用分離プルトニウムの備蓄増大を防ぐためには、再処理契約を中止したり、政府の決定によって無効にしなければならない。
|
| ・ |
現存する分離プルトニウムの備蓄は、最終処分でき、拡散に抵抗力のある形に変換されなければならない。技術的には、核分裂生成物との混合ガラス固化、あるいは貯蔵用プルトニウム棒を使用済み燃料要素に混入させる方法とがある。
|
| ・ |
中間期の橋渡しのために、分離プルトニウムは、国際貯蔵施設で中間貯蔵するべきである。その施設はこれから建設されなくてはならない。 |

現存する軍事用プルトニウムの危険性を回避する目的で、民事用に転換し、MOX燃料に転換することは適当な方法ではない。その量は多すぎて、消化するのに時間がかかることと、安全保障と安全性の問題があるからである。技術的に道理のかなった唯一の方法は、軍事用でも民事用でも同じであるが、核分裂生成物と混合して、最終処分できるような形にガラス固化すること、および国際貯蔵施設で中間貯蔵することである。
|