研究の構成
結論と提言

結論
この世で,最も毒性の強い元素の一つ
高速増殖炉は放棄され,MOXが推進される
プルトニウム備蓄は今も増え続けている
すべてのプルトニウムは潜在的に主要な核兵器材料である
核兵器プルトニウムのMOX処分は望ましくない
十分でない保障措置
信頼できない物理的防護(PP)
核テロリズム:増大する脅威
MOX製造と軽水炉での使用の安全性は疑問
MOXは過酷事故の影響を悪化させる
MOX燃料サイクルはその各工程で新たな危険を生む
MOXは燃料コストを大きく増加させる
乾式容器による貯蔵が現状では中間貯蔵のもっともよい選択肢である
核燃料のバックエンド政策としては直接処分が望ましい
MOX利用の社会的・法的影響は重大
日本のプルトニウムの長期計画が進行するとどうなるか?―警備のシナリオ
プルトニウム及びMOXの輸送―安全と安全保障が犠牲に

提言
透明性について
原子炉級プルトニウムの核兵器への利用可能性について
再処理について
高速増殖炉計画について
プルトニウムとMOXの輸送について
使用済み燃料の中間貯蔵について
核物質の在庫管理と物理的防護
MOX燃料加工について
MOX燃料の使用について
本報告書について


研究の構成

正式な研究名:MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)の
軽水炉利用の社会的影響に関する包括的評価

○研究代表者(プロジェクト・リーダー):高木仁三郎(原子力資料情報室)
○副代表者(プロジェクト副リーダー):マイケル・シュナイダー(WISE-Paris)

○共同研究者(各章の責任執筆者,アルファベット順)
 ・フランク・バーナビー(Frank Barnaby):
    元ストックホルム国際平和研究所所長,第2章を担当。
 ・保木本一郎(Ichiro Hokimoto):國學院大學,第6章第1節を担当。
 ・細川弘明(Komei Hosokawa):佐賀大学,第7章を担当(共同)。
 ・上澤千尋(Chihiro Kamisawa):原子力資料情報室,第3章を担当(共同)。
 ・西尾漠(Baku Nishio):原子力資料情報室,第4章を担当。
 ・アレキサンダー・ロスナーゲル(Alexander Rossnagel):
    カッセル大学,第6章第2節を担当。
 ・ミヒャエル・ザイラー(Michael Sailer):エコ研究所,第5章を担当(共同)。
 ・マイケル ・シュナイダー(Mycle Schneider):
    要約報告書(共同)及び付録1(共同)を担当。
 ・高木仁三郎(Jinzaburo Takag):要約報告書(共同),
    第1章,3章(共同),5章(共同),7章(共同)。

○論文寄稿者
 ・Mathieu Pavageau(Wise-Paris,フランス):付録1
 ・Richard Donderer(Kollert and Donderer,ドイツ):付録2-a
 ・Edward Lyman(Nuclear Control Institute,アメリカ):付録2-b
 ・Alexander Dmitriev(Gosatomnadzdor,ロシア):付録2-c
 ・Paul Leventahl,Steven Dolley
  (Nuclear Contorol Institute,アメリカ):付録2
○助言者(論文寄稿者に加えて)
  Bas Bruyne,Shaun Burnie,Tom Clements,Martin Kalinowski,
  Christian Kueppers,Wolfgang Liebert,
  David Lowry(英語のチェックの労もとってくれた),Damon Moglen,
  Lydia Popova
○論文レビュー
  Ross Hesketh(フリー,イギリス),
  Bernard Laponche(International Consulting on Energy,フランス),
  山口幸夫(法政大学,日本)

○事務局
  原子力資料情報室(伴英幸,渡辺美紀子,柳北典子)

○研究助成していただいた財団
  トヨタ財団,W. オルトン・ジョーンズ財団(W. Alton Jones Foundation),
  ジョン・マーク財団(John Merk Fund),プラウシェアズ財団
  (Ploughshares Fund)

○研究期間:1995年11月1日〜1997年10月31日


結論と提言            

─ 結 論


 プルトニウムは本質的に人工の放射性元素で,天然にはこの惑星ではごく一部の地域でほんのわずかに見いだされるにすぎない。ウランを燃料とするどのようなタイプの原子炉(100万kW級)も,1年におよそ200kgのプルトニウムを生産する。初期には,プルトニウムの同位体で最も重要な,半減期24,000年のプルトニウム239が大量に生産されて大量殺戮の兵器へと組み込まれ,この兵器はその恐るべき性能を1945年に長崎で示した。

 この世で,最も毒性の強い元素の一つ
 プルトニウムはよく知られた発ガン性の物質であるが,各種のプルトニウム同位体の組み合わせで成り立ち,民事原子力計画の中で一般的に用いられる原子炉級プルトニウムは,純粋のプルトニウム239よりも8〜10倍も毒性が高い。
 たった1gのプルトニウムが,4,000万人もの職業人の吸入の年摂取限度に相当する毒性を持つ。プルトニウムの問題を議論するときは,常にこのことを念頭に置かねばならない。

 高速増殖炉は放棄され,MOXが推進される

 プルトニウムの分離は,軍事目的以外にも,当初高速増殖炉の開発を正当付けの理由として進められた。しかしながら,高速増殖炉はアメリカとヨーロッパで完全に放棄された。フランス政府は,高速増殖炉計画の失敗を認め,西側の世界で唯一の工業規模の高速増殖炉,スーパーフェニックスを完全に閉鎖した。
 日本のもんじゅは1995年のナトリウム火災以降閉鎖されたままである。日本においても,今後大きな高速増殖炉計画が実施されるような現実的な見通しはまったくない。その結果として,プルトニムを分離するというかつての決定のツケとして発生した,ぼう大な量の余剰プルトニウムを消費するために,軽水炉でのMOX(ウランとプルトニウムの混合酸化物)利用が推進されつつある。

 プルトニウム備蓄は今も増え続けている

 2000年までには,(核兵器の外にある)米ロの分離核兵器級プルトニウムはおよそ160トンになるだろう。そのうえ,民事プルトニウム備蓄もとくにヨーロッパで増え続ける。1996年度だけを見ても,22トンの民事プルトニウムが分離され,そのうち軽水炉MOX及び高速増殖炉用として用いられたものは,8トンにすぎなかった。国際原子力機関(IAEA)の推定によると,1996年末までには,世界全体で,160トンが備蓄されている。日本の保有量は,日本政府によれば1995年末で約16トン,すなわち世界の約10%にあたるが,この割合は今後次第に増加し,2000及び2010年にはそれぞれ,30トン及び70トンの備蓄となるだろうと,この研究では予測される。

 すべてのプルトニウムは
       潜在的に主要な核兵器材料である

 いろいろな「品質」のプルトニウムがある。しかし,われわれの分析は,次の点をまぎれもなく明らかにした。すなわち,ほとんどどのような組成のプルトニウムも,そして,とくに現在日本で稼働するどの原子炉の使用済み燃料から分離されるプルトニウムも,核爆発装置に用いることができる。原子炉級プルトニウムの酸化物結晶を球形にした場合,臨界質量は約35kgであり,その半径は約9cm,すなわちメロンほどの大きさである。この酸化物を金属に転換する(化学的には難しくない)と,臨界質量は13kgとなる。天然ウランなどの反射材を使うとその量はさらに小さくなる。
 プルトニウム産業は原子炉級プルトニウムは核爆発装置を作るには不向きだと言い続けてきたが,これは誤解を招くものであり,科学的にも誤りである。


 核兵器プルトニウムのMOX処分は望ましくない
 90万kW級の軽水炉の3分の1炉心でプルトニウムを照射する場合,核兵器級プルトニウム約170kgが毎年消費されよう。核兵器からのプルトニウム合金を転換しMOXに加工するための全産業構造を必要とすることに加えて,この方法では,今後10年間で解体核兵器から生じる140トンの軍事プルトニウムを処理するのに,30基の炉を30年間動かし続けなければならないだろう。
 この実施は,長い時間にわたってプルトニウムを多くの施設に分散させることにつながり,核拡散防止となるよりはむしろ核拡散を促進してしまうだろう。

 十分でない保障措置

 この研究の科学者グループによれば,巨大な再処理工場(使用済み燃料の年間処理量800トン)の場合,仮に工場のコンピュータによる計算誤差が1%という低い値に抑えられたとしても,95%の確かさで転用が検出される最小量は220kgにも達し,それ以下の転用はチェックするのが難しい。その量は,6〜10個の粗製の核爆弾をつくるのに十分である。
 すでに1987年に,IAEAはMOX燃料加工施設と新規MOX燃料の貯蔵施設における保障措置の問題を「重要事項」としていた。
 新規燃料からプルトニウムを取り出すのは化学的に決して難しい技術ではない。MOX燃料を貯蔵することによって,原子炉サイトは取りも直さず核兵器物質の貯蔵所となるわけである。1996年に,IAEAはドイツの原発の運転事業者によって,MOX燃料の検認が拒否されるという問題に直面した。

 信頼できない物理的防護(PP)

 警備上の理由から,核施設の物理的防護の詳細は明らかにされていない。しかし,この研究の独立専門家グループは,その封じ込めと監視(C/S)のシステムについて十分洞察することができ,これらのシステムが破られたり,確実ではないというケースも生まれると推察する。とくに軽水炉MOX計画に伴って,プルトニウムと新規MOX燃料の輸送量及び貯蔵量が飛躍的に増えることが警備上の大問題である。アメリカのエネルギー省は,商業炉で核兵器プルトニウムをMOXとして燃やす場合、“殺傷能力のある武器で武装した”特別の警備システムを設けることの必要性を示唆している。

 核テロリズム:増大する脅威

 プルトニウムがますます入手しやすくなっていることと高度に専門化したテロリスト組織が存在することのために,今日核テロリズムへとエスカレートする可能性が今まで以上に高まってきた。これらの組織は前例のないような残忍性と大量破壊手段の使用の実例を示した。これらのグループのあるものが,いずれ粗製の核装置を製造するか同種の効果を持つ脅威を行使するであろうことは,疑いを入れない。

 MOX製造と軽水炉での使用の安全性は疑問

 工業規模のMOXの使用実績は酸化ウラン燃料のそれに比べてきわめて限られている。今日まで軽水炉で使われたMOX燃料集合体の数は,全軽水炉燃料に対して0.2%以下でしかなく,日本とともに英仏の再処理事業の最大の顧客であるドイツにおいてすら,使用比率は最大4%を超えない(年間5,000トンのウラン燃料に対してMOXは200トン)。
 MOX燃料のある種の性質は,軽水炉で使用する場合,とくにある種の過渡事象下では,マイナスの影響を持つ可能性がある。それらとは,

@ウラン燃料に比べて,MOX燃料の融点は20〜40℃下がる。
Aプルトニウムの濃度が増すにつれて,熱伝導度は系統的に下がる。
B制御棒の中性子吸収能力が下がる。
Cいくつかの反応度係数に変化が生じ,これはある種の条件下で原子炉の制御をより難しくさせる。
D出力の局所的なバラツキ(ピーキング)が大きくなる。
E遅発中性子割合が減り,制御を難しくする。
F中性子のスペクトルが硬化する(高いエネルギーにずれる)。

 全体として,MOX燃料の導入によって,軽水炉の安全上の余裕は小さくなる。さらに,軽水炉でのMOX燃料の燃焼については,とくにプルトニウム富化度が大きい時や燃焼度が高い場合,安全上不確かな点が多い。

 MOXは過酷事故の影響を悪化させる

 格納容器が機能を失うような過酷な原子炉事故の場合,ウラン燃料の場合に比べてMOX燃料を装荷した原子炉(3分の1炉心装荷)では,ある地点での被曝線量は2.3〜2.5倍になる。つまり,それだけ健康への影響も大きくなる。別の表現をすれば,MOXの導入によって同じ線量を受ける距離が増大する(1.8〜2倍)結果,それに伴う社会的影響の大きさは,その影響が被害地の面積に比例すると考えれば,3.2〜4倍となる。

 MOX燃料サイクルはその各工程で新たな危険を生む

 再処理,燃料加工,使用済み燃料の取り扱いなどのMOX燃料サイクルのすべての過程でプルトニウムの取り扱いが必要となるため,ウラン燃料だけの場合に比べて,各工程の危険度ははるかに増す。とくに,再処理工場からの巨大な放射能放出は,他の核施設に例を見ないもので,環境と健康に深刻な危険をもたらす。

 MOXは燃料コストを大きく増加させる

 本研究グループの独自の分析によれば,MOXを3分の1炉心導入した場合の軽水炉の燃料コストは,ウランだけの場合に比べて、約2.5倍となる。したがって,軽水炉にMOXを導入することを正当化できる経済的な理由は存在しない。日本でとくにコストが高くなる理由は,主として日本での一般的な建設費の高さによるだろう。しかし,ヨーロッパの企業に再処理と燃料加工を委託することでこの不利を回避しようとしても,その分だけ長距離の放射性物質の輸送量が多くなる結果,燃料コストの低下にはつながらない。

 乾式容器による貯蔵が現状では中間貯蔵の
               もっともよい選択肢である

 技術的な条件に関する限り,そして湿式プール貯蔵と缶型の貯蔵システムとの対比を見る限り,乾式容器貯蔵は,直接貯蔵の選択肢として,安全上の理由から最も望ましいと考えられる。というのは,この方式は,比較的単純で安価な,パッシブな安全装置に依存しているからである。

 核燃料のバックエンド政策としては直接処分が望ましい

 再処理に比べれば,直接貯蔵(処分)の選択肢が多くの理由,とくに次のような点で好ましい。
@廃棄物の体積:再処理をする選択肢では,直接処分に比べて,少なくとも6倍の体積の放射性廃棄物が発生する。
A放射性物質の放出:再処理は大量の液体・気体放射能を環境に放出するが,直接処分では実質的にゼロと見てよい。
B放射性物質の輸送:再処理に伴って日本とヨーロッパの間で,約200回以上の放射性廃棄物の輸送が今後10年間に予想される。
C中間貯蔵:中間貯蔵能力の不足を理由に再処理を選択するのは賢明なことではない。中間貯蔵能力の増大に技術的困難はない。
D廃熱の管理:MOX燃料の方がウラン燃料に比べて,使用済み燃料の廃熱発生量は2〜3倍以上となる。

 MOX利用の社会的・法的影響は重大

 現在日本の市民は,原子力問題と情報公開に関して,対等な当事者として法的なプロセスや政策決定過程に介入する権利と力を実質的に奪われている。最近の事態は,地方自治体の行政を通じて,住民参加が有効性を発揮しうることを示している。
 しかしながら,「公衆の安全と警備」を理由にプルトニウム計画に関しては常に企業機密と核物質防護上の機密の保持が正当化され,公衆参加の原理はないがしろにされるので,MOX計画は,民主的で参加型で透明性のある政策決定過程とは,相いれない。

 日本のプルトニウムの長期計画が
         進行するとどうなるか? ―警備のシナリオ

 日本のプルトニウムに関する長期計画が進行し続けると仮定すれば,プルトニウムの貯蔵と加工を含めて全体で約90の施設の防護が必要となろう。400回のMOX燃料の輸送が必要で,そのうちの40%はヨーロッパからのものとなろう。また,ヨーロッパから日本への高レベル廃棄物の輸送については,30〜60回が必要であろう。90の施設の防護には,5,400人の警備員が必要となろう(15人ずつ4交代で24時間)。
 核施設の危機状態についてあらかじめ備えておかなくてはならなくなる。アメリカにあるような核非常事態捜査班のような特殊集団がつくられねばならないだろう。そして,核施設の危機状態に対処するために,新たな警察力を養成する必要が生じるだろう。
 社会がプルトニウムを利用するときには,常に警備を強化することへの圧力がかかる。施設の警備に関する不安感が拡大されれば,社会には選択の余地がなくなり,警備の増強を理由に市民的自由が制限されてしまうだろう。

 プルトニウム及びMOXの輸送―安全と安全保障が犠牲に

 関連する輸送がどのようなものか,今計画されている福島第一原発3号炉のMOX計画を見てみよう。この計画では,核物質と核廃棄物が日本とヨーロッパの間を何回も行ったり来たりする。1種類の輸送物について1回の輸送を考えたとしても,これらの物質の合計の輸送距離は,10万キロメートルにも達し,地球を2まわりもする。これは警備官と保険会社にとっては悪夢にほかならない。

 IMA(国際MOX評価)プロジェクトの共同研究者は,次のような結論に達した。
 プルトニウム分離とMOXの軽水炉利用という路線のデメリットは,核燃料の直接処分の選択肢に比べて圧倒的であり,それは,産業としての面,経済性,安全保障,安全性,廃棄物管理,そして社会的な影響のすべてにわたって言える。換言すれば,プルトニウム分離の継続とMOXの軽水炉利用の推進には,今や何の合理的な理由もなく,社会的な利点も見いだすことができない。

─ 提  言


〈透明性について〉

 核に関する情報機密に関しては,議会の承認の下に設置された委員会によって全面的に見直しされるべきである。この委員会の委員は市民社会から選ばれ,原子力の利害から独立したものでなければならない。委員会は,今後の情報の公開の制限についての勧告をまとめるべきで,その時の原則は,原子力情報は本来的にはすべて公開されるべきものだということである。機密保持の必要性は,事例ごとに検討して判断されるべきである。

〈原子炉級プルトニウムの核兵器への利用可能性について〉

 日本政府は,軽水炉プルトニウムの核兵器利用可能性を認めて真摯な声明を出し,これ以上この点に関して誤った推測がなされないようにすべきである。

〈再処理について〉

 プルトニウムの軍事戦略的重大さと大きな毒性を考慮し,また,「民事」プルトニウムの備蓄がすでに1996年末の段階で世界で160トン,その10%以上が日本の電力会社のものであるという事実も考慮して,これ以上のプルトニウム分離は止めるべきである。
 現在の海外の再処理会社との契約は解消されるべきである。これは,具体的には次のことを意味する。
@まだ再処理されていないで海外にある日本の軽水炉の使用済み燃料,具体的にはCOGEMA社との契約分の800トンないし27%及びBNFL分のおそらく約2,300トンないし90%(BNFLからは正確な数字が得られなかった)は,日本に返還されるべきである。契約下にあってまだヨーロッパに輸送されていない使用済み燃料は,1%程度であるが,これらはもちろん日本で保管すべきものだ(数字はすべて,1997年3月時点のもの)。
A現在まで海外で行われた分の再処理廃棄物は,ヨーロッパから日本へ返還されるべきである。しかし,輸送の前には,徹底した影響評価とそれに応じた輸送方法の改善がなされるべきである。
B日本の電力会社と政府は,日本がすべての廃棄物を,再処理役務で決まるカテゴリーごとに引き取ることを公に明言し,この問題でヨーロッパの再処理会社と何らかの取り引きをしないことを明確にすべきである。また,日本側は,どのような廃棄物をどれだけ受け取るかについて計算を公表すべきである。
Cすでに分離されたプルトニウムは,当面はヨーロッパに貯蔵すべきである。そして,日本政府は,英仏の政府とただちに交渉に入り,プルトニウムを高レベル廃棄物と混ぜて処分するための最終パッケージをつくり,プルトニウム分離事業をプルトニウム廃棄体の製造事業へと転換する可能性について話し合うべきである。それらのプルトニウム混合済みの高レベル廃棄物ができたら,日本に返還されねばならない。
D日本政府は1997年3月の火災・爆発事故で運転の止まっている東海再処理工場の永久閉鎖を宣言すべきである。
E日本政府は,六ヶ所再処理工場計画の放棄を宣言すべきである。同工場はまだその建設の初期の段階にあるので,巨額な建設費が無駄になる(ドイツのヴァッカースドルフがかつてそうであった)前に建設を中止することが望まれる。

〈高速増殖炉計画について〉

 高速増殖炉計画は放棄すべきである。もんじゅは永久閉鎖すべきである。日本政府と産業界は,西側世界で唯一の工業規模の高速増殖炉スーパーフェニックスを閉鎖することを決めたフランスの政府と産業界のそれぞれと,最終的閉鎖と廃炉措置について協議すべきである。

〈プルトニウムとMOXの輸送について〉

 現在のプルトニウムとMOX燃料の輸送は許容しえない危険をはらんでいる。これらは,プルトニウムの廃棄物としての処理と処分に必要な最小限のものに限定すべきである。

〈使用済み燃料の中間貯蔵について〉

 日本政府と電力会社は,使用済み燃料の中間貯蔵について,中間貯蔵施設の立地点となる可能性のある自治体と住民に対して,ただちに協議を開始すべきである。その施設は原発サイトになるかも知れないが,サイトから離れた(AFR)施設となるかもしれない。この協議の最大の目的は,現在の再処理契約でカバーされている使用済み燃料を中間貯蔵に切り替えるために必要な貯蔵施設の受容条件を評価するためである。
 さらに新たに中間貯蔵施設の容量を増大させる場合には,第2段階の協議が必要で,その時には,当該の原発の廃止も含めた新たなエネルギー政策のシナリオをまず検討する必要がある。

〈核物質の在庫管理と物理的防護〉

 核物質の在庫管理の基準は,とくに日本のプルトニウム取り扱い施設において,大幅に向上されねばならない。
 プルトニウム取り扱い施設の物理的防護のレベルも,少なくともアメリカ並みに向上される必要がある。

〈MOX燃料加工について〉

 日本の電力会社は,MOX燃料を日本の軽水炉で使用することについての影響評価を何もせず,また,その使用についてまだ許可が下りてもいない段階で,ヨーロッパのMOX加工会社と契約してしまった。この契約は解消されるべきであり,電力会社は,プルトニウムの製造と使用についての議論がつくされる前に既成事実を積み重ねるようなことはすべきでない。

〈MOX燃料の使用について〉

 日本の電力会社は,技術面,経済性,社会的側面を含むMOX燃料の軽水炉利用についての総合評価をするよう,要請される。その評価報告は,その基づくすべての仮定を公表して行い,また,広範な一般公衆が参加した徹底したチェック・アンド・レビューにかけられねばならない。

〈本報告書について〉

 私たちは,日本政府,電力会社,原子力産業界に対し,この報告書を分析し,プロジェクトの代表に対して意見を提出するよう要請したい。
 プロジェクトのメンバーは,この報告書の結果について,日本の議会,政府ないしここで扱われている問題に関するいかなる委員会に対しても出席して証言する用意がある。
 さらに私たちは,MOXの軽水炉利用に関係したり関心を持ついかなる国の政府,電力,産業界に対しても,この報告書を分析し,そこでの結果に基づいて自らの核政策を検討し直すことを期待したい。