1 漢方がこころを治す

気持ちがゆううつで明るくなれない

やる気が失せてぼんやりする毎日

人混みへ行くと不安でおちつかない

2 ゆううつ感と爽快感に揺れ動くそううつ病

やらないと気がすまないのに、
気がめいってやる気になれない

 気持ちがゆううつで
 明るくなれない
 A子さん(26歳・主婦)は、元来明るく物事をテキパキ整理するほうでした。
 ところが、結婚してご主人の母親と同居するようになり、今までのマイペースでやっていたことが、お姑さんのチェックを受けるようになりました。それぞれの家には慣習があって当然なのですが、頭ではわかっていてもなぜ任せてくれないのかと、いつも半分不満な気持ちを抱かずにはいられませんでした。

 結婚して1年を過ぎた頃から、これからのことを考えると気持ちがゆううつではりあいがなくなってしまい、毎日が暗い状態で、もちまえの明るさが消え失せてしまいました。
 以前は、休みにはご主人と買い物や映画を見に行けば気晴らしもできたのですが、最近ではそんな気にもなれず、むしろ現状がわかっていないご主人に失望するようにもなっています。
  *  *  *  *
 A子さんのこころには、自分なりのやり方が構築されており、自信もそれなりにあり、それを通していきたい気持ちが存在します。この気持ちが、お姑さんの慣習を守っていこうとする行動
や意見を受け入れにくくしているのです。頭ではわかっていても、こころでは納得いかないということが生じているのです。
 自分の考えが通らず、気持ちを抑えていると、肝気欝といって、精神状態がめいったりゆううつになったりします。A子さんには、肝気欝を治す逍遙散という薬を処方しました。飲み出して1週間もすると、お姑さんのいうことが気にならなくなり、いわれることも自分のためにいってくれていると、素直に思えるようになってきたのです。1か月もすると、お姑さんとの垣根もとれ、思ったこともいえるようになり、以前のような明るい自分をとりもどし始めました。

上へ

やる気が失せて
ぼんやりする毎日

 Bさん(42歳)は、東京の本社でもバリバリの営業部長で、周囲を圧倒するほどの手腕を発揮していました。
 そんなBさんの弱点は、胃腸が弱く体力と持続力がない点です。
 1年前に営業部のトップとなり、営業先を訪問することも次第にふえ始め、今までのデスクワークからロードワークに変化するようになりました。
 そんな忙しい日々を過ごしているうちに、少し動いても汗をかくようになり、食欲が減退してきました。
さらにぼんやりしたり、眠けが出たりします。
 ひどくなると、物忘れまでおこります。
 Bさんには、脾気虚を治す補中益気湯を服用してもらいました。10日もすると、まず食欲が出始め、胃腸の調子がよくなり、食後の睡魔から解放されだしたのです。頭もはっきりし始め、ミスもなくなりだしたのです。
 1か月もすると疲れなくなり、もとの自分に復活したと喜んでいただけました。
 疲れも感じ、次第に前のようなやる気もおこらず、ぼんやりする日がふえるようになってしまいました。
 仕事の上でもうっかりしてミスが出たり、約束の時間を忘れたりもするようになってしまいました。また、よく眠ってもいるにもかかわらず、日中とても眠く、食後はどっと睡魔がおそってきます。眠らないと頭が重くさらに回転が悪くなるのです。
 Bさんは脾気虚といって、食べ物から元気をつくる力が不足しているため、持続力がなかったり気力が失せたり、

上へ

人混みへ行くと
不安で落ちつかない

 Cさん(26歳・主婦)は、デパートや駅などの人混みへ行くと動悸がし始め、息苦しく息が吸えず、いてもたってもいられなくなります。
 今まで、何度か血の気がスーッとひいたかと思うと手足が痺れ、意識を失ったこともあります。
 病院での検査の結果、過呼吸症候群といわれ、いつまた発作がおこるかと思うと、一人で人混みへ行くこともできません。
  *  *  *  *
 Cさんは、小学生のころから体力や肺活量がないために息もきれやすく、マラソンなどの運動も苦手だったそうです。
 大人になってから、人混みで息がきれて苦しくなったときに、知らない人ばかりの中でどうにかなったらどうしようと思い、緊張しているうちに意識を失ったことがあります。
 Cさんは、息ぎれがおこらないように肺気を高めることが必要です。さらに動悸や不安感をとるために、
心陰を補う炙甘草湯を処方しました。
 漢方薬を飲みながら、人混み近くへも足をのばしてもらいました。
 2か月もたつと息ぎれもなくなり、雑踏でも緊張しなくなり、そして半年後には発作もおこらず、どこへでも行けるようになりました。
 Cさんの漢方治療で一番大事な点は、息ぎれや動悸などの症状が出なくなることが安心感につながることなのです。それが、緊張をひきおこさないようにしてくれるからです。

上へ


 Dさんは、去年、ツアーでグアムに旅行に行きました。その際、現地でいろいろ世話をやいてくれた男性の案内人を好きになってしまいました。日本に帰ってからは、簡単に会えるわけもないので、あきらめようと思うのですが、あきらめきれません。
 そんな毎日を過ごしているうちにめいってしまい、仕事もやる気になれず、うつうつとした日が多くなってしまいました。きちんと仕事をしないと気がすまないDさんのはずが、仕事もウッカリミスが多くなり、段取りも悪くなってしまったのです。
 最近では、食欲もなくなり、たちくらみやめまいもし、生理もだんだん遅れがちで、こない月もあります。

 Dさんは、会いたくても会えない気持ちから、肝気がのびやかでなくなり、肝気欝をおこしてしまいました。肝気は、からだのいろいろな機能をコントロールしていますので、肝気欝になると、胃の機能が狂ったりして食欲が落ちたりします。
 また、肝は、血を貯蔵していて、必要に応じて身体の各部に供給しています。もし、肝の血が少なかったりすると、生理が不順になったり、たちくらみやめまいもおこすようになるのです。
 Dさんには、肝気のはたらきをよくして、肝血を補う作用のある、逍遙散を飲んでもらいました。すると、会いたい人のことは当然気にはなるのですが、また休暇を取って会いに行けばいいやと、割りきれるようになったのです。これは割りきろうと思い込むのとは異なり、こころの底からそう思えることを意味します。意識して割りきろうとすればするほど、そのことが頭から離れなくなることがあり、かえって意識してしまうことになりかねません。肝気欝をよくするということは、こころの面でのゆううつな気持ちやめいりを治してくれます。もちろん、食欲も出始め、生理も順調になりました。

●肝気欝血虚証の特徴

 ゆううつで気持ちが落ち込み、すべてがつまらなくやる気になれない。
 気が晴れないのでため息をついたり、つい考え込んでしまったり、ぐちっぽくなる。反面、もどかしさから、情緒不安定でイライラしたり、おこりっぽくなったりもする。生理の前に精神が不安定になりやすい。

 肩こり、頭痛、目のかすみ、たちくらみ、めまい、食欲不振、大便がコロコロしたり、すっきり出なかったりする。生理は不順になったり、生理痛がひどくなり、生理前に乳房がはったりする。

主要処方・・・逍遙散

上へ